わからないこと
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「悠舜」
「黎深、また入ってきたんですか?」
ここ数日の長雨が上がって、久しぶりに太陽が差し込んでいる尚書令室に、黎深がふらりと現れた。
どういうわけかタイミングよく、悠舜が一人の時に黎深は現れる。
これもまた、天つ才の無駄遣いか…と悠舜は小さくため息をついてから続けた。
「こんなに宮城に顔を出すなら、また仕官でもしますか?」
黎深はちょっと目を泳がせた後、少し赤くなって悠舜から視線を逸らして答えた。
「…悠舜がしてほしいと言うなら、してやってもいい」
「言いませんね。あなた、王家のためには仕事しないでしょう?」
あっさりと拒否すると黎深の眉間に皺が寄ったのを見て、悠舜はクスクスと笑いながら、手元の書簡をまとめて机案の片隅に置いた。
「そろそろ紅州に帰った方がいいじゃないですか?百合姫が待ってますよ?」
「構わん。私は忙しいのだ」
「言ったでしょう、自分の愛情は素直に相手に示さないといけない、と」
黎深は少し考えて、ぷいとそっぽを向いた。
「だから私はここにいるんじゃないか」
「ふふ、黎深にしては上出来ですね。でもそういう言葉は私じゃなくて、ちゃんと百合姫に向けてあげてください。で、今日はなんの用です?」
黎深は少し悠舜を見てから、棚に置いてあったお湯と柚子蜜を悠舜の前に置いた。
「…黎深、お茶ぐらい自分で入れてください」
「悠舜、茶を入れてくれ」
「…」
言ったところで黎深は聞かない。
さっさと茶を入れて本題を聞いて帰ってもらおうと、悠舜は何も言わずに手を動かした。