冬の夜
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鳳珠が戻ってきた時、まだ春麗は庭を見て座っていた。
うっとりとしたような表情をしている。
瑞蘭が用意したのか、隣にもう一つ椅子が置いてあったが、春麗の後ろから腕を回して、顔をつける。
思ったほど冷たくなっていなくて、鳳珠は安心した。
「おかえりなさい。鳳珠様、お風呂上がりであったかいですけれど、冷えないようにしていただかないと」
ポカポカした鳳珠の頬が気持ちよくて、そっと瞳を閉じる。
「瑞蘭に二枚着せられたから大丈夫だ。春麗もそんなに冷えていないな」
「火鉢をもう一つ用意してくださったでしょう?おかげさまで暖かいです」
とさっと庭の木に積もっていた雪が落ちた音がして、二人は同時に目を向けた。
鳳珠はこめかみに唇を落としてから腕を解き、春麗の隣に座った。
「どうして今日に限って庭を見ていたのだ?」
「…こちらに住むようになってから、なかなかお庭を見る機会がなくて残念に思っていたんです。今日は満月でしょう?月明かりに雪が映えて、素敵だなと思って…」
「日頃忙しすぎるからな。最近は庭師に任せきりであまり手も入れられてない」
「でも、鳳珠様のお庭は素敵ですよ」
頼んであったのか、瑞蘭が酒を持ってきた。
鳳珠の横に置かれた小机の上に置いて、そのまま去る。
「少し、飲むか?」
「えぇ」
暖かいお酒で体も少し温まる。
「酒も、こうやって適度に飲む分にはうまいんだがな」
昼日中から飲んでいる同期の顔を浮かべながら、鳳珠が苦笑いする。
「そうですね…暖かくなったら、お庭でお花を見ながら飲みたいです」
「どんな花を植えるか今度一緒に考えよう」
春麗はキョトンとして、鳳珠を見た。
「どうした?」
「鳳珠様のお庭だから、わたくしが意見をするのはおかしいでしょう?」
真面目な顔をして答える。
「・・・」
今度は鳳珠がキョトンとした表情をしてから、ふっと笑った。
「春麗は…どこまでも可愛いな」
ちゅ、と唇を寄せてから抱き寄せる。
「私のものは全てお前のものだ。だから、一緒に考えるのは当たり前だ」
反対側の手で酒をキュッと煽って、頭を寄せる。
春麗はお酌をしながら真っ赤になって、「鳳珠様ったら…」と小さい声で答えた。
「こういう静かで穏やかな時間もいいものだな…春麗がいるから尚更だ」
しんしんと降る雪の音を聞きながら、しばらく静かな夜を二人は楽しんだ