鳥は飛ぶ
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おまけの話 柚梨編
春麗の黄州異動について悠舜から話があり、致し方なく承諾してからの鳳珠は何かと忙しなく動いていた。
仕事はいつも以上に馬車馬のようにこなし、合間に何やら文を書いては出している。
その様子を横目で見ながら、副官としてやることはいつもと変わらないが、新婚一年ちょっとの若い愛妻と過ごせる時間が急に短くなってしまった年下の友人のために、自分が何か手伝えることがあれば言ってくれればいいのに、と柚梨はいつも思ってそれとなく声をかけるが、特にしてあげられることもないらしい。
実はそれ以上に、副官としては戸部尚書補佐である春麗が抜けることについては、仕事面での戦力低下が大きかった。
ここのところ春麗が抱えている仕事は機密事項も多く、大半は尚書と自分で引き継がなければいけないこと、そのほかのものを誰に振るか半日悩んで書いた案を見せて上司の承認も取ったので、並行して部下たちに指示を出しながら引き継いでいるので柚梨自身もとても忙しかった。
休憩のお茶は、最近は新人官吏の謝光泉が淹れてくれる。
腕前は春麗ほどではないが、碧門ということもあり育ちがいいせいか、彼の淹れるお茶もなかなかである。
どうやら、魔の戸部尚書の好みについては春麗から聞き出したらしく、お茶もお菓子も外していないところがなかなかしっかりしていると柚梨は見ていた。
そんなお茶の時間になった時、おもむろに鳳珠は立ち上がり、窓を開けてひょいと外に出た。
「え?鳳珠?」
見れば、戸部の前の庭に、何やら止まり木が二つ設られていた。
(いつの間に?)
柚梨は顔だけ出してポカンと見る。
心なしか、仮面の下は嬉しそうだ。
「なにやら嬉しそうですね」
「ったく、お前は…」
「春麗ちゃんが黄州に行った時のやりとりのために準備してるんですね」
「みなまで言うな」
少し不機嫌そうになった鳳珠に、柚梨は小さく笑った。