花は紫宮に咲く−3
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進士としての最終日。
秀麗と春麗は薄くお化粧をして、影月とともに宮城に向かう。
進士たちは広間にずらりといならんだ朝廷百官を見て戸惑った
「…おかしいな、いつもなら吏部で、吏部尚書から官位と辞令を受けると聞いたが」
珀明が首を捻る
「そうよねぇ、これじゃまるで国試及第の時みたい」
(黎深叔父様が秀麗の前に顔を出さない、というのは想定できたけれど…これはおそらく大きな目玉人事があるということよね。燕青殿が出入りしている、さらに準試を受けたとなると、やはり茶州人事かしら…そして)
春麗はくるりと見回して(やっぱりいない)と苦笑いした。
黎深のことだ、きっと此方から見えない物陰から様子を見ているのだろう。
「まあいい、さて、どこに行かされるかな。僕は絶対中央だ」
「僕はできれば地方がいいです!春麗さんと秀麗さんは?」
春麗は少し口角を上げて意味深に微笑んだだけだった。
秀麗は少し考えてから答えた
「私は、どこでもいいわ、どこだってやることは同じだもの」
「…その通りだ」
「あ、魯官吏…とと、魯尚書」
「構わぬ。どちらでも同じだ。さて、静粛に。今年度、陛下の御代初の進士級台車であり、上位に入ったそなたらは、特別に陛下御自ら官位と辞令を授けられる」
少しざわつく
「さっきの紅進士の言葉は真実だ。たとえどんな官位、どこの地へ飛ばされようとも、君たちがするべきことは何一つ変わらない。官吏とは何のために存在するのかーそれを常に自問しなさい。そうすれば、何をすべきか自ずと見えてくる」
次々と新進士たちに官位と辞令が与えられていく。
珀明が呼ばれ、念願の吏部配属となった。
(絳攸兄様を心から尊敬し、課題も吏部に関するものだったからよかったわ)
と春麗は思った。彼ならきっと早くに頭角を表し、吏部で必要とされる人となっていくだろう。
戻ってきた珀明と目があったので、軽く微笑んでおく。
珀明は少し照れたような顔をして、その後、力強く頷いた。
「杜進士、及び紅秀麗進士、前へ」
二人一度の唱名に、広間に戸惑ったようなざわめきがみちた。
二人が前に出たと同時に、春麗と珀明も顔を見合わせる。
「ー今年度第一位状元及第者、杜影月。及び第三位探花及第者、紅秀麗。そなたら両名を、茶州州牧としてここに任じる」
え?
おそらく驚いたのは言われた二人だろう。
目を見開いて顔を見合わせる。
どこかから
「主上!こんな新米にいきなり各省庁の長につぐ官位の州牧を任せるなどいったい何をお考えです!」
「しかも二人一緒になんて!」
当の本人たちはまだ茫然自失である
(そうきましたか…)
「おい」
珀明が小声で春麗を呼ぶ
「どうなってんだ?」
「さぁ?」
「それぞれ半人前だから二人一緒でちょうどいいと思ったのだ」
劉輝はなんということもない、といった風に答えた。
「ちょうどいいとはー」
「ではそなたが茶州州牧として参るか?」
声を上げた官吏は口をつぐんだ。
赴任したら最後、死体で戻るのも珍しくない。
茶州は僻地、治安は悪い、茶家の無軌道ぶりも知られている。
劉輝は、前茶州州牧を決めるときの悶着の話をする。
新長官二人に合わせて、補佐を二名つけるといった。
一人は鄭補佐を据え置き、もう一人として名前が上がったのが浪燕青だった。
秀麗と影月が慄いているのを、クスッと笑って見た。
さらに、護衛としての専属の武官として静蘭の名が上がった。
長い間封印されていた名剣、”干将”を授けられる。
(静蘭、身の置き方を決めたのね)
春麗は振り向いた静蘭に微笑んで頷いた。
だが秀麗と影月は次々に想定外のことが起こり、呆気に取られたままだった。
最後に、もう一度確認されて、二人が行くことを名言し、王の花として”蕾”が贈られた。