花は紫宮に咲く−2
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絳攸と別れ、俥に乗り込む。
「黄尚書、本当に申し訳ございません。春麗が倒れてご迷惑をおかけした上に、お言葉に甘えて送っていただいてしまって」
秀麗が礼を言う。
「いや、構わん」
「秀麗と影月くんはお腹が空いただろう、待たせてしまって悪かったね」
「あ、それは絳攸様にどこかから折詰が届いて…それをいただいたから大丈夫よ」
「はい、美味しかったですー」
俥の中の当たり障りのない会話に入ることをせず、春麗はなんとなく聞いていた。
黙っていたのが気になったのか、「大丈夫か?気持ち悪くなっていないか?」と鳳珠が気にかける。
「はい…大丈夫です」
「そうか、気分が悪くなったら速度を落とすように言うから、言え」
「はい」
邵可が「気を遣っていただいてすみません」と代わりに謝った。
しばらくして紅邸に着き、俥を降りる。
先に鳳珠が降り、影月にも秀麗にも手を貸した。
降りる時に秀麗に手を貸している姿を見て、秀麗の後ろで春麗がきゅっと目を瞑ったのを見た鳳珠はクスリと笑って、春麗の手を取った時に、ぎゅっと握ってからおろして、頭をポンポン叩いた。
「しっかり休め。明日も頼む」
「はい」
鳳珠は邵可に挨拶をして、俥に乗り込み、紅邸を去った。
食卓で先に帰っていた静蘭がお茶を配る。
「春麗お嬢様、体調は大丈夫ですか?」
「少し疲れが出てみたいで…明日は大丈夫だと思うわ」
「僕、薬湯作りましょうか?僕の堂主様はお医者で、医者になるために勉強していたので、得意なんですよ」
秀麗はびっくりして影月を見る
「そう…なの?じゃあ、お願いしたら、春麗?」
「そうね、明日まだ具合が悪かったら、お願いするわ」
「はい!遠慮せずに言ってくださいねー春麗さん、あまり何も言わないから、たまには僕を頼ってください」
「ありがとう」
邵可がその様子を嬉しそうに見る。
「それにしても、黄尚書って優しいですねー俥降りる時、僕も手を貸してもらいました。小さいからだと思いますけど、アハハ」
(そう、だったんだ…)
春麗は少し口角をあげた
「そうなのよ、仕事はすごい厳しいけどね。そういえば、春麗は今回、戸部の仕事が多かったの?」
「そうね、吏部、戸部、礼部…ほとんど戸部と礼部が中心かな。あ、あと工部に一度使いに出たら餌食にあったくらいかしら?」
「工部?あそこも黄尚書と同期の尚書だったね?」
邵可が思い出したように言う
「えぇ、管飛翔尚書、悪夢の国試組よ。すごい大酒飲みで、仕事中も飲んでいるの」
「黄尚書が”酔いどれ尚書”って呼んでいるわよね」
秀麗が思い出したように口を挟む
「そう。工部は女人官吏反対派だったから、書翰持っていったら受け取ってももらえなくてね、それで酒飲み対決を…倒れるまで飲まされるらしいけど、時間がないからってさっさとその場にある一番強いお酒を指定して3杯飲んだら処理していただけたわ」
ケロリと言う春麗に、四人の顔が引き攣る
「春麗、お酒飲んだことあったの?」
「うん、ちょっとだけね。でも父様も母様も異常に強いから、イケる口じゃないかしらと思っていて、大丈夫だったわ」
「ちょっと待て春麗、なんでそれを知っているんだい?」
邵可が不思議そうに尋ねる
「あら?だってよく夜中にお酒飲みながら静蘭と三人で遊んでいたじゃない?夜通し飲んでいることもあったから相当強いと思っただけよ」
(あ、あれを見られていたとは…)
邵可と静蘭は青ざめる。
「あ、それ、この前、燕青がいたときに教えてもらったわ。春麗もやってみる?」
「へぇー夜通し飲んで平気ってすごいですねー何して遊んでいたんですか?」
影月が興味深げに聞いてきたのを受けて、邵可は慌てて酒の話に戻す。
「あ、あぁ、妻は確かにすごく強かったね。あれはザル…ワク…いや、それ以上だ。だがまあ春麗も秀麗もまだそんなにお酒に免疫がないのだから、やめておきなさい」
さらに静蘭が話の方向を無理やり変える。
「春麗お嬢様は戸部の仕事があっていたんですかね?尚書が厳しいので有名と聞きますが」
影月がのほほんと
「そうみたいですよー戸部の仕事って尚書が厳しいから無理って逃げ出した人たちが多かったようですけど、今日の優しい黄尚書を見たら、みんなびっくりするでしょうねー」
言ったので、秀麗と春麗は顔を見合わせて笑った。