花は紫宮に咲く−2
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査問会で先に標的となったのは秀麗だった。
彼女は見事にくぐり抜けた。
多くの問いに淀みなく答え、この場の官吏の度肝を抜いたのである。
「では、次に紅春麗進士への問いを。我こそは、と思う者から述べよ」
姿勢を正し、すぅ、と一呼吸して待つ。
だが、誰も口を開かない
「当然だな、探花の紅秀麗進士があの回答だったのだ。それより上の…状元である紅春麗進士には聞くまでもなかろう」
しばらく待ってから劉輝が告げた。
これで査問会は終了となった。
査問会が終わった後、宮城全体は通常の仕事に戻った。
春麗も戸部の書簡運びをしようと、指示を仰いで書簡を受け取り、「では行ってまいります」と踵を返したところだった。
(あれ?)
目の前が真っ暗になり、ガクッと膝から倒れた。
「天寿くん!」
景侍郎の声が遠くに聞こえ、意識を手放した。
鳳珠はすっ飛んでいって、様子を見ようと抱きかかえた。
「!!」
軽すぎる。
春の茶太保の事件の時に医務室に運んだ時より、少し前の冬に抱えた時よりも数段軽い…
「柚梨、黎深に知らせてくれ。多分睡眠不足と貧血だ。仮眠室で休ませる。書簡は侍童に頼んでくれ」
「わかりました」
柚梨はすぐに指示を出し、自ら室を出て行った。
仮眠室の長椅子に横たえる。
ほとんど寝ていないのはわかっていて、時折寝かせていたがそれでも十分でないのは知っていた。
だが…ここまで軽いということは、ほとんど食べてもいなかったのだろう。
(栄養失調と睡眠不足か)
こんなことなら、もっと食べさせてから寝かせればよかった。
(黎深も同じことを言うだろうな)
春麗の話では昼間に少し吏部で寝ていると言っていたから、おそらく黎深は同じことをしていたのだろう。
だが、まだ十七歳の少女には、負荷がかかりすぎていた。
毛布をかけ、しばらく様子を見る。
その頃、知らせを受けた黎深は、吏部を出て戸部…ではなく、王の執務室に行った。
バン!と扉を開け、「絳攸!」と叫ぶ。
「な、なんでしょう?」
「来い。今日はここには戻れない」
腕を引っ張り歩き出す
「あ、ちょ、ちょっと!!」
「問答無用!」
あまりの剣幕に、劉輝も楸瑛も口を挟む余地がなかった。
そのまま引っ張られて府庫に行く。
「兄上を呼んでこい。そして、お前は兄上が戻ってくるまで、ここにいて秀麗たちを見ていろ。腕は期待できないが、お前がいることで嫌がらせはないだろう。影はいる」
「えっと…いつまで?」
絳攸は事態が見えずに目を白黒させている。
「兄上が戻るまで、と言った。すぐ終わるかもしれないし、夜までかかるかもしれないがそのつもりでいろ。行け」
とりあえず、絳攸は府庫に入っていき、邵可に外で待っている人がいるから行ってほしいことと、自分が代わりにここにいることを伝える。
わかった、と邵可は立ち上がり府庫を出たところで、紅い扇を開いた黎深がボソボソと何か言っていた。