花は紫宮に咲く−2
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秀麗と影月が妨害を受けながら必死になって向かっている頃、朝議の場では即刻縄についた蔡尚書への取調べが続いていた。
彼に加担した者も次々と暴露され連行されていったが、それで捕物は終わりでなく蔡尚書は未だ縄目を受けたままその場に残された。
「さて蔡尚書、そなたには余罪があったな。紅秀麗進士と杜進士に害を及ぼそうとした」
蔡尚書はびくりと反応した。
「証拠はいくらでもある。最初の集合時、書状の時刻を故意に変えられたのは、最後の確認印を押す尚書のそなただけだ。また毎日の昼食で礼部から出される仕出しの折詰、その箸の部分から軽微な毒が検出された。府庫での膨大な量の書簡も同様だ。全て杜進士と紅春麗進士が毒を選別して処理している。二人は余に現物の証拠も提出していて、”一部の書翰”がどこの部署で、誰の最終印が推されているかも確認済みだ。ちなみに、先程の黄尚書が用いた横領の証拠書類、作成したのは紅秀麗進士と、杜進士だ」
ざわり、と声が上がる。
「…あの、細かい数値を、ですか?だいたいなぜそんなことを?」
「書翰の整理や、予算確認の検算でおかしいと思ったそうだ。魯官吏からの自由課題をその指摘にしようと二人で証拠をそろえていたらしい。それを聞いた紅春麗進士が、最後の礼部官の勤務実態についてまとめた。国試の不正疑惑に関して朝議が開かれると知って、何かの一助になればと仕上げて黄尚書に提出した。誰が不正をしているかは、みんなちゃんと気がついていたわけだ蔡尚書」
「…が悪いんだ」
「は?」
蔡尚書はくるりと後ろを向いて、春麗を指す。
「女など入ってくるから悪いのだ!そうだ、全ては貴様ら小娘が官吏面でノコノコ入ってきた時から全て狂い出したんだ」
狂ったように喚き散らす
「確かに不正の噂は私が流した、だがおかしいと思わないのか?突然降って湧いたような女人受験に十七の小娘が状元と探花及第だと!?国試はそんなに甘くない!不正をしていないと思う方が無理だろう!ましてや紅家の娘で後見は紅黎深…吏部尚書、とあれば、誰もが思ったはずだ、誰もが!」
一人の官吏が口を開いた
「主上、私もそう思います。国試及第は実力でなければ認められません。それこそが、先王陛下が国試を導入した一番の理由であったはずです」
周囲の視線が春麗に集まる。
(正直、怒りを通り越して呆れるわ)
刺さる視線を物ともせず、静かに微笑んだ。
それを見た劉輝は静かな声で答えた
「そうだな、実力主義が国試だ。だから先王は王でさえ介入不可能な国試制度を作った。それは。国試を突破してきた者がいちばんよく分かっているのではないか?、そう、国試は甘くない」
重い空気を打ち破るように子供の声が響いた。
「そうだ、秀麗師と春麗師はズルなんかしねぇ!!」
(柳晋…、なぜ、ここに?)
びっくりして見つめていると目があったのでにっこりと微笑む
「紅秀麗、参りました!」
その後、秀麗の凛とした声が響いた。
秀麗は劉輝の前に跪く。
「紅進士、ちょうど正午だ。そなたの進士及第を疑うもののためにこれより査問を開く」
「どうぞご随意に」
部屋の隅に劉輝が視線を送る。
「紅春麗進士、そなたも一緒に」
「かしこまりました」
その場で跪拝し、承諾する。
「では場所を移そう。新進士たちも呼べ。疑るものは位にかかわらず誰でも傍聴可とする。公開口頭試問ならば、不正も何もしようがないだろう。好きなだけ確かめるがいい。彼女たちが国試及第を果たしたのは、不正か否か」
朝議は終わり、場は査問会へと移ることになった。