はじまりの風−1
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程なくして、秀麗、春麗、静蘭は後宮に住まいを移した。
「期限付き、報酬付き、衣食住きっちり補償、男色家だから夜の心配もなし、それに仕事内容は教育係兼根性叩き直し係みたい」
な仕事を、そう悪くないといって秀麗はそれなりに張り切っている。
ただし、王に会う機会はまだなかった。
一方、春麗は女官という役割は与えられたが、筆頭女官の珠翠と世話係の香鈴がついていたため、特にすることもない。
仕事を頼まれた時に言われた”もう一つの仕事”は、侍童の格好で三師の世話、ということだったようで、朝から呼び出されて外朝に出ていた。
三師の室に顔を出すと、5日間会えていない王と秀麗を心配して
「運命の出会いを用意するのじゃ!」
と頓珍漢な検討をしている三人。
「そんなの、私だったら願い下げですね」
世間話に付き合ってもつまらない、とバッサリ切って、春麗は室を出た。
(することないし、黎深叔父様のところにでも顔出してこようかしら)
とはいえ、吏部に行く理由になる仕事もない。
もっとも、吏部なら尚書室にしれっと普通に入ったとしても、誰も咎めないことを知っていたが。
(おそらく、仕事してないだろうから絳攸兄様のためにはいった方がいいんだろうけれど、今の状況をは兄様にはあまりバレたくない…)
考えながら歩いていたら、どん!と誰かにぶつかった。
「申し訳ございません!」
すぐに傍により侍童の礼を取る。
「大丈夫ですか?こちらこそ気づかなくてすみません」
丁寧な言葉に思わず顔を上げたら、いつぞやの宋太傅への手紙をことづかってくれたおじさんが立っていた。
(これはまずい!)と思ったが、あれは何年も前だし、女児の服装と侍童の変装では違うと思い直し、再度頭を下げる。
「考え事をしていて前を見ていませんでした、大変申し訳ござません!」
(これでやり過ごして行ってくれればいいだろう)
と思っていたが、そうは問屋が卸さない。
「いえ、怪我をするといけないから、気をつけてくださいね。」
あの時と同じ優しい声で話しかけてくれる。
「君、名前は?」
「天寿、です」
少し心が緩んだ時に、とんでもない事を告げられた。
「私は景柚梨、戸部侍郎です。天寿くん、もし手が空いていたら、手伝ってくれるとありがたいんだけれど、どうでしょう?」
天寿、こと春麗は、お辞儀をしたままきっちり鐘3つ分固まった。