花は紫宮に咲く−1
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
劉輝が姮娥楼に向かってからしばらくして、執務室にふらりと春麗が現れた。
「李侍郎、お伺いしたいことが」
「春麗か、あの人が捕縛された」
「えぇ、噂は…本当なんですね。自主的に行ってそうですが…」
春麗は眉間に皺を寄せる。
「それと、秀麗と影月が姮娥楼で軟禁されている。そっちは劉輝が向かった」
「え?」
「明日の午に、秀麗とお前の査問会が開かれる」
「なんでわたくしは誰にも捕まらないのかしら?」
首を傾げて考える。
「春麗殿、襲われたりはしていないかい?」
楸瑛が目を細めて聞く。
「そういえば…初めの頃、何回かは。大したことなかったのでのしたり躱したりしてたら来なくなりましたけどね」
「・・・」
楸瑛と絳攸は顔を見合わせ、絳攸がポツリと言った。
「確かに、俺より強いな…」
「そんなことより、査問会は明日の午、ですわね。叔父様の件もあるということは…」
斜め上を見ながら、春麗は考える。
(秀麗たちはおそらくあの課題を明日の朝までには提出するでしょう。せっかく作ったアレをくっつけるとしたら…頃合いを見計らって鳳珠様にお願いするしかないわね)
「絳攸兄様、しばらくここにいさせていただいてもいいかしら?長くても明日の朝まで」
「構わんが…いるなら、仕事を手伝えよ。王の代理だ」
「はぁ???」
何をふざけたことを。とはならず、本当に主上の代理をやらされた。
(こんな…押印までさせようとするなんて何考えているのかしら、兄様)
それだけは嫌だと拒否し、書簡の中身を仕分けて、核になる部分を記載し、順番に並べておく。
王が戻った時に押すだけでいいようにはしておいた。
そうこうしているうちに紅家に寄る
”四半刻を持って城下の機能半分停止”が告げられる。
「玖琅叔父様…」
ぽつりと春麗はつぶやいた。
程なく、秀麗と影月の無事を確認した劉輝が帰ってきた。
「仕事の仕分けは春麗にやらせておきました。どうしても判はつきたくないと言うので、あとは押すだけになってます。かなりわかりやすく仕分けてある」
絳攸が粛々と告げる。
「いやー、それにしても城下の機能停止、なんて本当に豪快だね。君の上司」
楸瑛も笑い声が棒読みである
「いえ、これは黎深叔父様ではなくて、玖琅叔父様ですわね。紅家第一の方ですから」
「あぁ、これでも玖琅様にしては手加減している。塩と鉄と米には制限を加えていないからな。範囲も貴陽だけに限定しているし、紅姓官吏の出仕停止はしても、辞表提出はさせていない」
何事でもないかのように、春麗と絳攸は話す。
「…これが、紅家の力か」
劉輝は嘆願書の山を見渡した。
「こうなったら、とっとと片付けるぞ。全く、権力に弱い小物のくせして、何をとち狂って絳攸でなく黎深に手を出したのだあの男は。飛んだ迷惑だ」
「主上、もしかして彼は黎深叔父様が紅家当主、ってこと知らなかったんじゃないかしら?」
「確かに、黎深殿が公の場で明かしたことはありませんし、そもそも七家当主が宮仕えしているなんて、普通は考えませんよね」
春麗と楸瑛の言葉に、劉輝と絳攸はおしだまった。
「・・・それは盲点だった」
フッと笑った楸瑛は、コトリ、と小箱を渡す
「邵可様から届きました、ものすごい証明書付きで。ひょんなご縁で玖琅様が持っていたようですよ」
「今頃、逃亡の準備をしているだろうな」
「その辺りも、玖琅叔父様が動いていらっしゃると思いますわ。ところで…例の秀麗と影月殿の課題の補足に、こんなものを作ってみましたけれど、ご確認いただけますか?」
春麗は懐から比較的薄い書簡を出し、劉輝に渡した。
中を見た劉輝は目を見開いてから口の端を上げた。