黄金の約束−5
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春麗、秀麗、影月は1ヶ月ぶりに家に帰った。
食事を囲みながら、話題は龍蓮についてだった。
「春麗は意外と平気そうだったわよね、心の友その一の姉、とか言われてなつかれてたし。アイツ、わたしが何回訂正しても、”姉”は直さないのよねっ!」
秀麗は”姉”が気に入らないらしく、ぷりぷり怒っている。
「心の友その一の姉、と言う時点で付属物でしょ、龍蓮殿にとってのわたくしは。そうねぇ、わたくしの方が落ち着いて見えるのかもしれないわね。どうかしら、影月殿?」
「そうですねー、秀麗さんは龍蓮さんのすることを直そうとして怒るけど、春麗さんの方は見守りって感じですよねー。なんかお姉さんっぽい雰囲気あるの、わかりますー。僕のことも、影月”殿”って呼んでくれるでしょう?」
ニコニコと影月は答える。
「そういえば、春麗って大体”殿”呼びよね、龍蓮のことも珀明のことも。なんで?」
「なんで、かしらね?あまり考えたことないわ。まぁ無難、というか…向こうから呼び方を変えてくれ、と言われたら変えると思うけれどね」
(実際、滅多にないけど二人の時は”鳳珠様”になってしまっているし…)
「じゃあ、僕の呼び方も変えてくれますかー?僕の方が年下なので、秀麗さんと同じで”影月くん”がいいですー。珀明さんみたいに”小動物”はやめてくださいねー」
笑いながら影月は要求する。
「えぇっ?」
「そんなに驚かなくても。だってもうこちらにお邪魔して随分経ってますし」
(まあ今は”影月くん”って感じだけど・・・)
「影月さん。でもいいかしら?だって、これから大人になって、出世していったら、表向きは役職で呼ぶかもしれないけれど、裏で自分より偉い人に”影月くん”って言いにくいわ。それに、その頃になって”影月さん”って言ったら、なんか余計よそよそしいでしょう?」
「春麗さん、面白いですね〜。そんな先のこと考えているんですか?、まぁ、僕はそれでもいいですけどー」
「良かったわね、影月くん。春麗、ずっと気にしていたのよ、影月くん。ちなみに珀明も。」
珀明殿も気にされていたのか、と少し驚いて春麗は苦笑いした。
「あら、それは悪かったわね。言っていただければ考えたのに。龍蓮殿は多分気にされていないと思うけれどね」
「本当、春麗、龍蓮のことはよくわかった風にいうわよね」
「だって、名前知っているのにいちいち”心の友”とか”愚兄その四”とか言っている時点で、龍蓮殿なりの基準があるんでしょう?それがわからないから、そのまま受け入れているだけよ」
「そういえば、”愚兄その四”ということはうえにお兄さんがまだ3人いらっしゃるんですかねー?」
影月がのんびりと尋ね、邵可が解説をする。
「じゃあ龍蓮さんって五人兄弟なんですかー賑やかですねぇ」
邵可は否定も肯定もしなかった。
父上はかなりの艶福家で腹違いの兄弟姉妹を含めればかなりの数になるが、正式に藍本家を名乗れるのは本妻の五人兄弟だけとなる。
(嘘はついてない、嘘は)
「父様、ずいぶん親しげな口調だけど、上のお兄さんたちも知っているの?」
「うん、ご縁があってね。折々に季節の便りを交わしているよ」
「へー、初耳。春麗の後見人のとき、父様ってぜんぜんツテがないと思っていたけれど、実はすごいのね。有効活用しないだけで。紅家と縁が切れても父様と縁を切らなかった貴重な方々ね。いい人たちね」
「龍蓮くんもそうだったかい?」
グッと秀麗は炒め物を喉に詰まらせた。
「うーん、冷静に判断すれば悪かないのよね。ただ真っ直ぐなんだけど、方向が人と五十二度くらい違う、っていうか」
「・・・何でそんな微妙な数字なんだね?」
「四十五度とか九十度とか百八十度ならなんとか考え合わせることも可能じゃない。でも龍蓮はかなり微調整できる人じゃないと滅多に重ならないってこと」
(我が娘ながらよく見ている)
邵可は内心感心した。
「龍蓮くんと関わりくないかい?彼があまり好きではないかね?」
「正直に?」
「うん」
「そうね、好きか嫌いか聞かれれば、好きよ。ある意味劉輝以上のおバカだし。いつだって全力で付き合わなくちゃいけなくてほとほと疲れ果てるけど、龍蓮って絶対嘘はないから」
影月も同意した。
「そうですよねー龍蓮さんって本当にまっすぐですよね」
「秀麗、さっき言ったね。龍蓮くんが他の人と重なることは滅多にないって」
「うん?」
「それは翻せば、誰とも同じものを見ることができないということじゃないかな。…それはひどく寂しくて、孤独なことだと、わたしは思うよ。彼が好きだというのなら、そして彼が真っ直ぐだというのなら、それなりの覚悟を持ちなさい。誰かと関わるなら、いつだって相手と同じものを返さなくてはいけないよ」
「春麗もだけど、父様もあったこともないのに、随分龍蓮に理解があるのね」
少し思い出してみる。
「そうねぇ、なかなか調整しにくい人がいる、ということを知っている、と言った方が正しいかもしれないわね」
「うん、角度で言うと二三二度ぐらいかな…」
邵可と春麗は同じ人を思い浮かべていたとわかり、顔を見合わせて、ぷぷっと笑った。
秀麗と影月はそれを見て不思議そうに顔を見合わせた。