黄金の約束−5
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遡ること8日前、会試前日。
いよいよ明日から試験、という夜に、龍蓮はまたぴ〜ヒョロと笛を吹いていた。
そこを、散歩に出た春麗が通りかかる。
最近、あまり人の人生を見ないようにしていたが、出会った時にうっかり影月を見てしまってーそのおかしな歪みに気がついてから、また力の調整がしづらくなっていた。
そして、謎の笛吹男・龍蓮が気になってじっと見つめる。
龍蓮もそれに気がついて、じっと見つめてきた。
(あれ?)
春麗は首を傾げる
(龍蓮殿が見えない…)
「そなたは…人生の先が見えるであろう?」
「!!」
どうして、それを?とは言葉にならずに絶句する。
「いわゆる、仙が持っている力とは少し異なるが…人生の先が見えても、何もできない」
「・・・」
「後もう一つ。千里離れたものが見えるようになるかもしれぬな。これも、見えるだけで変えることはできない」
「・・・・・・」
(そういえば、柳晋が龍山で迷子になっている話を聞いたときに、姿が見えた気がして山へ入ったけれど、あれはこのことだったのかしら…?)
黙ったまま何も言わない春麗に、龍蓮は「試してみるか?」と聞いた。
”千里”といわれても、ぴんとこない。
遠いところはそんなに知らないので、目を閉じて茶州を思ってみる。
”燕青殿と悠舜様の横に、男装の麗人…”
パチパチ、と瞬きをすると、目の前は龍蓮だった。
「これ…」
「見えた、ようだな。見ようと思わなければ、見えない。”人の人生の先”と同じように、今のそなたなら、調節できるはずだ」
「どうして…こんな力、いらないのに・・・」
「不要、と思うのなら使わなければいい。それだけだ」
戸惑いをバッサリと切り捨てる龍蓮の一言に、春麗は苦笑した。
「龍蓮殿は、意外と厳しいのね」
「そうか?何度でもいうが、どちらの力も、使わなければいいだけだ。どんな力があろうと、そなたはそなたの好きな人生が選択できる」
(母様と鳳珠様と同じことを言うのね…)
「そう、ね…」
「そういう力がある、と知っていれば、怖くないだろう」
「龍蓮殿は、わたくしが後で知って驚かないように、今教えてくださったのね」
ぴ〜ひょろ
答えの代わりに変な笛を吹いたのを聞いて、春麗はプッと吹き出した
「心の友その1の姉は笑っている方がいいな」
龍蓮は知ったような言い方をする。
そういえば、”心の友その1の姉”と龍蓮が言うたびに、秀麗は毎回ムキになって訂正していた。
「龍蓮殿、なぜ心の友その1の”姉”なの?」
「なぜ、って姉は姉だからだろう??」
言われるたびに、何が違うのか、という感じで首を傾げていた龍蓮。
春麗はため息をつく。
「あなたも、色々な力があるのね、でもそのことは、あなたの胸にしまっておいて」
私にはあなたの力が何なのかさっぱりわからないし、わからなくていいけれど、と告げる。
「そう!それでいい!わからなければわからなくていいし、見たくなければ見なくていいのだ。さすが心の友その1の姉だな!」
言っていることがわかるようでわからない。
でもわからないようでわかる、それが”藍龍蓮”なのだろう。
「ありがとう、少しスッキリしたわ。おやすみなさい」
これで、うまく調整できる気がする。
またうまくいかなくなっても、龍蓮の言葉でいつでも平常心にもどれる気がした。