黄金の約束−5
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(心の友その一と姉?)
楸瑛は気になったが目の前で灰になっている二人と平然としている一人を見て、意識を戻した。
「龍蓮、邸に帰りなさい」
「断固、断る」
兄たちの絶対命令に逆らうことはできなかった。予備宿舎に入れてしまった時点で一度失敗しているのだ。
「邸に帰りたくない理由はなんだね?」
「あの別邸は無駄に広く悪趣味に綺羅綺羅しく、わたしの美的感覚にまるでそぐわぬ」
なぜ弟がこんな摩訶不思議風流感を持って育ったのか、楸瑛にはサッパリわからない。
「この一月、我らの心は友として固く結びついた。いかに愚兄が姑息な策を弄そうとももはや遅きに失する。彼らは快くわたしを賤屋に迎え入れてくれるだろう」
「賤屋で悪かったーじゃなくて、何勝手なこと言ってんのよ!影月くんはともかく、あんたを養う余裕はないわっ!」
秀麗は蒼白になって叫ぶ。
「秀麗に心の余裕はないかもしれないけれど、龍蓮殿が滞在されるなら、藍将軍が”お心遣い”くださるんじゃないかしら?ね。藍将軍?」
「春麗、愚兄その四などに頼らずとも、滞在中はこの笛でしっかり小金を稼ぐから安心いたせ。ふっ、旅ではよくそうしていて稼いでいたから慣れたものだ」
影月がふと思いついて何気に失礼なことを聞いてみた。
「もしかして、”お金を払うから早くどこぞへ”とか言われませんでした?」
「さすが心の友その二、すっかり以心伝心。もはや阿吽の呼吸の如く通じ合えてわたしは嬉しいぞ。我が笛は数拍で人の心を満足させてしまう罪な音なのだ」
楸瑛は秀麗からの
”お願いですから兄として責任を持ってこの孔雀男を引き取ってくださいー!!!”
と言う悲壮な眼差しを感じた。
「龍蓮。一度しか言わない」
楸瑛は腰の剣に手を掛ける。
「来なさい。でないと本気で抜くよ」
いつもと違う、ひんやりとした声に秀麗と影月は悪寒を感じた。
春麗は、少し目を細めて、龍蓮を観察している。
「藍龍蓮の名を持つ君にこれ以上フラフラさせておくわけにはいかない。自覚しなさいー特にこの貴陽にいる間は」
龍蓮の目が一瞬強い光を放った。だが、譲ったのは龍蓮だった。
「…あの、藍将軍、やっぱりうちで龍蓮引き取ってもいいですよ?このごろ変人限定長屋みたいになっちゃってますし…」
秀麗が様子を見ておずおずと言い出す。
「大丈夫、そこまで秀麗殿に迷惑はかけられないよ。コレにそこまで気を遣ってくれるとは、わたしの方が妬けてしまうね」
「真の友情を脳内変換して汚すな愚兄」
あろうことか龍蓮が龍蓮が手放した笛を反射的に受け取った秀麗は腰が砕けた。
楸瑛が後ろから抱き留め、笛を取り上げる。
「龍蓮、もう少し考えて行動しなさい。渡すなら頭に刺さっている羽にしなさい。せっかくできた友達なんだから大切にしないとダメだろう」
龍蓮は頭に刺さっている羽飾りを3つとって、そろっと差し出す。
「わたくしも??」
「ああ」
思わず三人は受け取ってしまった。
この羽が、後に大騒動に巻き込まれるきっかけとも知らずに。
連れられていく龍蓮を見ながら、春麗は別のことを思い出していた。