黄金の約束−5
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適正試験には、春麗は首席で、秀麗は次席で合格した。
春麗の首席合格が邵可邸で絳攸以外の人に驚かれたのは言うまでもない。
そして会試も無事…ではないが、なんとかかんとか終わる。
その会試が終わった日、紅黎深はいくつもの仮面を並べて、謎に上機嫌で半刻も薄気味悪い高笑いを浮かべていた。
同じ頃、反対に、藍楸瑛は暗澹たる想いを味わっていた。
この日から楸瑛は休暇を取った。
遡ること、木枯らし吹き荒れる冬の日に、兄の一人から届いた手紙。
『会試・龍蓮・世話』
これが会試が大荒れに荒れた理由だった。
中心にいた弟ー龍蓮ーはなんら影響はなく。周囲だけが凄まじい暴風雨に巻き込まれた。
後にはぺんぺん草も残らないような、恐ろしい大災害だった。
中でも。某少年少女たちの被害は甚大だった。
運悪くも龍蓮抗体を持つ稀な資質を持つ持ち主たちであったため、傍目に被害者と見なされず、まとめて”フダツキ”にされてしまった。
(秀麗殿…春麗殿…影月くん…珀明くん…本当にすまなかった…)
龍蓮たちが入棟した予備宿舎は”呪いの第十三号棟”と囁かれ、かの棟の管理責任者が駆け込み寺の如く次々と辞表片手に王の執務室に決死の討ち入りを果たした。
(流石にかの伝説の悪夢の国試、黄尚書や紅尚書の年には敵わないが、私たちのときとは張る国試になったかな…)
イヤイヤながらに、弟を迎えに行く。
この後、最終試験である殿試を待つことになる。
全てをしぼりつくした彼らが空を見上げる余裕を持つには、もう少しの時間が必要だった。
♪ぴ〜〜〜ひょろろ〜〜と間抜けな笛の音が聞こえてきた。
「うわー!!」と叫びながら、周りの人たちが頭を抱えて離れていく中、弟のそばに珍しく人が残っていた。
「…だーもうやめなさいってば!っていうか一緒に歩かないでちょうだい。同類と思われたら子々孫々末代までの大恥よっ!」
「しゅ、秀麗さん、もう少し婉曲に」
「甘いわ影月くん!この孔雀男のせいでどんな目にあったと思っているのっ」
その後、人生に悔いなしとか悔いありとか、秀麗と龍蓮はやり合っている。
全く、秀麗の生真面目さというか、真っ直ぐさというか、面倒見がいいといえばいいのだが、猪突猛進にぶつかっていくあたりは不器用と言えば不器用だ。
「あら、あれは…藍将軍?」
「え!?藍将軍、って…あの、本当にアレ、いえ、そこで笛吹いているのとご兄弟…なんですよね?」
春麗は思わずぽろりとこぼした。
(生地も仕立ても最高級、女受けを意識した清涼感とくずし感…姮娥楼で姉さん方が熱を上げるもの無理ないわね、泊まらないって噂だけれど)
「春麗殿、どうかした?」
「いえ…いつもと装いが異なるから、気づかなかったと思いまして。失礼いたしましたわ」
楸瑛はウインクを一つ飛ばしてから秀麗に向き合い
「私もコレが生まれて十八年、何万回と確認したけれど悲しくも事実だったよ。三人とも、試験お疲れ様だったね。その…色々と迷惑をかけてすまなかった」
はたと笛が止んだ。
「なに?愚兄その四。我が心の友らにどんな迷惑をかけたのだ。全く身内として恥ずかしいぞ。さては秀麗の悔い事件の犯人は愚兄か!我が目を掠めて心の友その一かつうら若き淑女に人生の汚点となるような行為を!見損なったぞ愚兄ー!!」
「龍蓮、誰のせいで秀麗殿たちが獄舎に放り込まれているかわかっているか?」
「勅命を下した王と愚兄その四を含む腹黒い側近たちのせいに決まっているだろう。全く実に不当な扱いだった。私の笛で心慰め、心の友その一と姉の見事な鍋料理で暖を取らねばどうなっていたか」
しれっと龍蓮は答え、周囲はまたガクッと項垂れた。