黄金の約束−5
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また次の食事会の日。
「春麗殿、それで後見人は決まったの?」
「えぇ、決まりましたわ」
「誰だ!?」
絳攸が詰め寄ってくる。
「あら、絳攸兄様、知らないの?」
頷いた絳攸を見て(なんで言ってないんだろう?)と邵可と顔を見合わせる。
春麗はそのままじーっと邵可を見る。
「私が、いうの?」
聞いてくる邵可にコクコクと頷く。
「宋太傅だよ」
「「「えええええええーーーーー???」」」
楸瑛、静蘭、絳攸の3人が椅子から飛び上がらんばかりに驚く。
「な、なぜ・・・?」
「宋太傅、って霄大師と同じ朝廷三師のお一人でしょう?」
「秀麗殿、宋太傅は…伝説の将軍なんだよ。いまだに羽林軍で彼に勝てる者は、黒白大将軍以外、ほとんどいない。両大将軍だって勝ったり負けたりだ…」
「将軍、ってことは、武官の方!?なんでまた??」
秀麗は疑問符だらけの顔をして春麗を見る。
「色々、総合的に、考えた結果、お願いしました」
(説明するとボロが出るからここまでにしておこう)
「ね!父様!」
「あ、あぁ!そうなんだよ。色々あってね…まぁ、みんなはあまり気にしなくていい」
なんとなく納得しない顔の面々に対し、邵可と春麗はダンマリを決め込んで、黙々と食事をした。
「あ!食事中に申し訳ないのですが。春麗お嬢様にお手紙が届いていたのを思い出しました」
と静蘭が手紙を2通差し出してきた。
「あら、どなたから?」
秀麗がまた覗き込もうとするのを、さっと隠す。
「食事が終わってから読むわ」
と言って懐にしまったが、一通は料紙の色で差出人を見ずともわかってしまった。
どうやら、口角が上がっていたようで、
「春麗殿が文を見てから嬉しそうにしているのは妬けるね」
などと楸瑛に揶揄われる。
「秀麗には主上からほぼ毎日文が届いているじゃない?わたくしに来ることは滅多にないので嬉しいのですわ。それも2通も」
さらっと言っておいたことでなんとなく周りは納得しているふうだったけれど、邵可だけはひっそりとため息をついた。
時々届く黄色い料紙の差出人が誰か、その手紙の裏面には書いていない。
だが、邵可も見ずともわかってしまったからだ。
ところで、もう一通は誰かしら?と懐から出して確認する
(悠舜様!)
パァッと春麗の表情が明るくなった。
「どうしたんですか?春麗お嬢様」
静蘭が訝しげに聞いてくる。
「えっと、燕青殿が無事に茶州についている、という証拠の手紙よ」
「燕青が?どういうこと?」
「茶州にいらっしゃる方へ、燕青殿が帰るときに手紙を託したの。その方からのお返事だから、彼が無事に向こうに着いている、ということだわ」
なんで茶州に知り合いが?みたいな感じで小声で話しているのを聞きながら、これ以上はしゃべるまい、と思う。
父様だけが「それはもしかして…」というので、「そうよ」と短く答えた。
「お手紙をくださるということはお元気なんだね」
と言って、顔を見合わせる。
食後の秀麗の勉強の時間、いつもだと洗い物を先にするのだが、静蘭に一度室に戻ってから片付けるのでそのままにしておいて、と伝えて室に戻り扉を閉める。
懐から手紙を2通出す。
先に悠舜の手紙を開き、中を読む。
燕青から手紙を受け取ったこと、そして春麗が綺麗なお嬢さんになっているという話を聞いたことや、身体の心配をしてくれてありがとうなど、さまざまなことが書いてあった。
また、国試を受けると聞いたから頑張ってほしいということと、会えるのを楽しみにしているということも。
最後に、黎深と鳳珠をよろしく、と書いて締めくくられていた。
くるくるとたたんで、もう一通を開く。
いつものように体調を気遣う文面と、後見人が決まった話を黎深から聞いたが、勝負をしたということでものすごく怒っていたこと、できれば自分も危険な勝負はしてほしくない、ということ、そして適正試験の励ましと。いつも最後は戸部で待っている、と書いてくれる。
中の署名は”黄鳳珠”
どうやら、夏の件で黄尚書は秀麗とも季節の便りを交わしているらしいが、”黄奇人”できているのを春麗は知っている。
この署名を見ると、ほとんどの人が呼ばない彼の本名で接してもらえることに、嬉しさを感じる。
丁寧にたたんで胸の前でキュッと抱いてから、大切に文箱にしまった。