黄金の約束−5
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手紙を届けた黎深の家人は宋太傅から「すぐに来るように」と伝言されたということで、邵可、黎深、春麗は黎深の俥で宋太傅の邸へ向かった。
「宋太傅、本日は急なお願いにもかかわらずありがとうございます」
通された室で、貴族の子女の礼で挨拶をする
「今日はまた随分と着飾ってきたな、それで、邵可殿や紅尚書まで引き連れて、なんの用だ?嫁にでもいくのか?」
依頼の内容が読めているのでニヤニヤとして聞く。
「単刀直入にもうします。”国試女人受験制”のわたくしの後見をお願いいたします」
「武官の私に、か?」
「正一品である宋太傅以上に、強力な後見はおりませんわ。それに、わたくしの師でもありますから、わたくしの意思で、宋太傅にお願いしたいのです。」
邵可と黎深は後ろで黙って様子を見ている。
「霄を選ばなかったことは誉めてやる。が、条件が一つある。わかっていると思うが、わしと本気で勝負しろ。お前が勝ったら受けてやろう」
「かしこまりました。それでは…」
と言って、バサッと紅色の服を脱ぐ。
下には、武官が鍛錬で着るような防具服を身につけていた。
頭の簪を抜き、高い位置で結んでいた髪の毛をくるくるとまとめて。簪で止め直す。
「ほぅ…どうやら、本気のようだな」
「はい」
「こっちへ来い」
庭院の片隅に、武術場のように石を貼り鍛錬ができる場所が作られていた。
「本当は真剣でやりたいところだが、父親がいるからな、目の前で死なれたら気の毒なので譲歩してやる」
木刀を2本取ってきて、1本を春麗に投げる。
「判定は、邵可殿にお願いしよう」
邵可はぎりっと奥歯を噛み締めて、頷いた。
「春麗、本気で行くからな」
「お願いいたします」
この言葉が合図となり、二人の勝負が始まった。
力は宋太傅の方が上だが、速度は春麗の方が早かった。
うまく宋の力を交わしながら、春麗は切り込んでいく。
随分長いこと打ち合っているが、全く勝負がつかない
邵可も黎深も、固唾を飲んで見守ることしかできない…
そこからさらに壮絶に打ち合う時間が経過し、そろそろ二人とも体力の限界、というところに来た時、二人はぱっと一度間合いを大きく取った。
「なかなか…やるな…」
肩で息をしながら、宋太傅が言う
「お年寄りのくせに…化け物…」
春麗も完全に呼吸は乱れている。
(多分、わたくしにとって、これが最後の一撃の機会…)
二人は同時に駆け出した。
ガンっ!!
と打ち合った時に、力の差で春麗はふっ飛んだ…
「あぁっ!!!」
黎深が叫ぶ
吹っ飛んだ…ように見えたが、くるりと一回転して着地した後、簪を引き抜きながら上に飛び、宋太傅の肩に乗って木刀で宋太傅の木刀を受け、首筋に簪を当てる。
「そこまでっ!」
邵可の一言で、勝負は決着した。
だが、まだ春麗は首に簪を当てたまま、宋の肩の上に乗っていた。
「フハハハハ!よくやったな、春麗。望み通り、推薦人になってやろう」
木刀をおろし放り投げながら、宋太傅が言う。
「ありがとうございます」
ようやく、地面に飛び降りて、宋太傅に礼をした。
「お前、ワシが刀を下ろすまでそのままでいたな」
「昔、何度も騙されて勝負あった後に打たれましたからね、こんな大勝負で気を抜くことはできません」
宋と春麗は流石に疲れて座り込んだ。
「春麗、お前さん、国試じゃなくて国武試受けないか?もしくは配属は兵部だな」
「いやですよ、兵部なんて」
「どこか希望があるのか?」
「それはまた、いずれ」
と言って立ち上がる。
「父様、黎深叔父様、ありがとうございました」
とお辞儀をする。
「中にはいろう。茶ぐらい飲んでいけ」
と言われ、四人は室に戻った。