黄金の約束−5
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翌日昼、秀麗が出かけた後に、黎深が来た。
春麗が「少し采を作ったから、食べながら話しましょう。黎深叔父様のために、秀麗にお饅頭もお願いしておいたから蒸すわね」と言って、準備に取り掛かる。
「話というのは、後見人のことだね?」
秀麗の作った饅頭をデレデレと食べながら、黎深は尋ねる。
「私が名前を伏せて二人ともみてもいいと思っているんだが。正三品以上、となったら、尚書以上の位でないとできない」
「黎深叔父様、お気持ちは嬉しいですが、流石に紅家のゴリ押しと思われるのはよろしくないかと思います。特に、貴族派に」
「フン、そんなの気にしなくていい」
(春麗はそこまで考えていたのか…)
邵可は内心舌を巻く。
黎深のところで勉強していたとは聞いているが、秀麗のように自分が基礎を教えたわけでもなく、春麗の知識について邵可は全く把握していない。
ただ黎深が何もしていないのと、絳攸も”春麗は勉強しなくていい”と言い切っているということはそれなりに合格圏内に入っている、と見ていいのだろう。
「春麗、尚書以上だったら黄尚書にお願いしてみたらどうかな?黎深の同期は尚書がたくさんいることだし、黄尚書じゃなくても…」
邵可は一つ案を出す。
「あいつらには任せられません。それに、鳳珠はダメです」
「なぜだい?」
「一つは、春麗が鳳珠に頼まないと言っていたと絳攸から聞いています。もう一つは、女人官吏が誕生した場合の処遇についての法案を、景侍郎と鳳珠の連名であげています。内容については二人で精査して”戸部として出している”ということになっていますが、あれは十中八九、鳳珠が考えています」
「鳳珠様…!」
春麗は小さな声で驚いたように言った。
「様、なんかつけんでいい!あんなの、奇人変人仮面で十分だ!」
黎深は春麗にがるると噛み付く
「だが、その法案は女人官吏の処遇や結婚・出産に対しての条件をしっかり決めてあり、よくできている。一つ、紛糾した”復帰条件の見直し”を州試レベルの試験を受験して合格すること、でまとまり、”今回、女人が受かった場合”に法案として通すことで合意した。この法案を出した時点で、鳳珠も推薦人になるつもりはかなろうよ。痛くもない腹を探られることになる」
滅多に他人を褒めない黎深が珍しい。
「そんなふうに考えてくださるなんて、ありがたいね」
邵可は嬉しそうにしている春麗に向かって言った。
「父様、叔父様。わたくし、後見は宋太傅にお願いしたいと思っています」
「「宋太傅!?」」
「理由は、正三品の方は尚書方、ほとんどが叔父様の同期となります。ただでさえ”紅家”から二人も受けるのに、叔父様が秀麗の後見をやっているということで、”紅家”の力が強く見えるでしょう」
采を一口食べて、飲み込む
「その点、宋太傅であれば、”全く関係なさそうな”、”武官出身”です。違和感はあれど、正一品に反対意見は出せないでしょう?紅家との繋がりも希薄です」
「それであれば、霄太師でもよさそうだが?」
春麗はため息をついて伝える。
「父様、春のことを忘れたんですか?霄太師にお願いしたら、見返りにまた何をさせられるかわかりません。それに、過去のことで御史台なんかに探られたら目も当てられない。その選択肢はわたくしにとって危険しかありません。その点、宋太傅であれば、条件は自ずと決まってきます。単純明快、たった一つ、一本勝負です。命までは取らないでしょう。」
「春麗、お前…」
邵可は絶句した。
(やはり、知って、いたのか…?いや、それとも…?)
それには何も答えず、懐から文を出した。
「黎深叔父様、宋太傅への手紙です。お邸にいらっしゃるようであれば、今日明日にでもお伺いしたい、という内容になります。お出ししてくださいますね?」
「わかった。ちょっと渡してくる」
と言って席を外した。
「もしかしたらすぐに来るように、といわれるかもしれませんので、わたくしも着替えてまいります」
残された邵可は、暫し呆然としていた。