黄金の約束−5
名前設定
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適性試験も差し迫ったある日、四日に一度の夕食会の日に、秀麗は口を開いた。
「ねえ父様、私の後見の方に、本当にお礼しなくていいの?」
最近の秀麗の悩みはこれに尽きる。
「うん、ご本人が気にしなくていい、って、ね。素直にお言葉に甘えておいていいと思うよ」
「絳攸様、ご存知ですか?お名前も教えていただけないんです。不義理な娘だと思われてしまっていないか、心配」
「あ…えっと、邵可様のおっしゃる通りだから、いいと思うぞ。ご本人のたっての希望だし」
秀麗以外は誰なのか知っているのだ。
本人が”名前を伏せて”後見を名乗り出ただけで周りは大迷惑である。
「ねぇ春麗、春麗の後見はどなたなの?」
「わたくし?まだ決まっていないわよ」
「「「「えっっ??」」」」
秀麗、静蘭、絳攸、楸瑛が揃って声をあげる
「春麗殿、だってもうそろそろお願いしなければいけない時期だよ?適正試験受けるんだよね?」
「えぇ、そろそろ、ね。秀麗の方を先に決めたほうがいいと思ったから、そちらが決まってから考えようと思っていて」
この一言で、秀麗以外はあぁ〜という表情で納得した。
「だが、”大貴族もしくは正三品以上の高官”の推薦となると、自ずと限られてくるからな…”大貴族”というのは紅家がそもそもそうだが、頼めそうなところはないな。かといって”正三品以上”となると尚書以上の位になるからそれも限られてくる…伝手らしい伝手は黄尚書ぐらいか?」
絳攸がぶつぶつと言いながら対象者を考える。
「心配しなくても大丈夫よ、絳攸兄様。二、三日うちには決まるわ」
「そんなこと言ったって春麗、父様にそんな偉い方にお知り合いがいるとも思えないわよ。それにあなた、勉強しているそぶりもちっと見せないし、色々心配よ」
だいぶ邵可と春麗に失礼な物言いだが、秀麗は心から心配しているのだ。
気持ちはわかるが、絳攸はあまりいい気分がしなかった。
「秀麗、春麗の心配をしている場合があったら、お前はもっとしっかり勉強に集中しろ。風邪で遅れた分も取り返さないといけないんだぞ」
話を無理やり切り替える。
冷たい言い方に静蘭の目が光ったのに気がついたが、絳攸は無視した。
食後、いつものように洗い物をする。
秀麗の代わりに静蘭にとやかく聞かれるのが嫌で、「今日は父様と藍将軍と一緒に晩酌してあげて」と言って、静蘭を追い出して、一人で担当した。
途中で、絳攸が水が欲しいとやってきた。
「兄様。さっきはありがとうございました」
「あの人が秀麗についたからな、流石に二人はまずいだろう、と言って止めているが、まだ本人はやる気だぞ、どうするんだ?黄尚書にでも頼むか?」
「いいえ、黄尚書にはご迷惑をおかけしたくないので、お願いしません。明日、公休日ですよね、叔父様にお話がしたいとお伝えいただけませんか?父様と3人で。父様には後で言っておきます。秀麗は昼前から夕方まで道寺でいません」
「わかった。伝えておく」
お盆に茶器と水瓶を乗せて渡す。
「春麗、大丈夫だと思うがいちおう少しぐらい本でも読んでおけよ」
「えぇ、叔父様から大量に送っていただいているから、それを読んでいますわ」
絳攸は秀麗の室へ戻って行った。