序章
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翌日から「毎日書庫に行きたい」と言って、春麗は邵可について出かけるようになった。
邵可が仕事をし始め落ち着いた頃を見計らって、府庫の入り口で渡された侍童の服装に着替え、宋の迎えを待ち、府庫から見えない裏庭で剣の稽古をする。
どうやら、運動神経はかなり良いようで、初めのうちは苦戦していたがコツを掴むとみるみる上達してきた。
力がない分、速度と身軽さと正確性で大人を完全に躱せる動きが身についた。
「少し動けるようになってきたな。もう少し段階を上げてみようか?」
と子供相手だが真剣勝負の宋太傅は毎日楽しそうに勝負をしていた。
それを霄と茶が並んで見ているというのが定番である。
ちなみに黎深には府庫通い2日後に迎えに行ったのに邸に来なかったことで早々にバレて怒られたが、止められはしなかった。
「本当はやめてほしいが、府庫で一緒にお茶をしてくれたら許してあげる」と言われ、毎日仕事をサボって春麗のためにとおやつを持ち込む黎深と邵可とお茶をすることになった。
邵可は春麗がウロウロし始めているのは知っていたが、「気をつけなさい」というだけで何をしているかまでは問い詰めなかった。
それは”先が見える”ことを知っているが故に自分の思う通りにさせられない、という思いだけでなく、まだ小さい時に、”秀麗を中心に回っている”ことを指摘され、自ら姉であることを降りた長女に対する、罪滅ぼしであったのかもしれない。
二ヶ月ほどしてから、「せっかくなんだから、政治や経済、交渉術もしっておいて損はない」霄と茶の講義も始まった。
「借りるよ」と霄は邵可に一言だけ告げ、宋太傅がひょいと担いで連れて行く。
邵可に「大丈夫、私がちゃんと見ておくから」と茶太保が告げ、邵可はより不安になったのはいうまでもないが、逆らえなかかった。
(やっぱりクソジジイだった…)
出会った時の第一印象を撤回し、異常なシゴキについていく。
黎深のところで見てもらっていた勉強よりより実践に近いこと、また星詠みや政治学など黎深からは教えられていないこともあり、春麗はそれなりに勉強は楽しんでいた。
そのうち、侍童の格好のまま使いに出されたりして、時々吏部に行っては黎深に捕まり、戸部に行っては仮面姿の鳳珠を一方的に見て驚いたり、お手紙を取り次いでくれた優しいおじさんがいたのでバレるとまずいと走って逃げたり、宮城の中の作りを覚えていった。
小さい侍童が走り回っているというのは話題になっていたが、さっと書簡を届けて走って逃げていくので、顔をちゃんと見た者はほとんどなかった。