黄金の約束−3
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次の日の夜、早速「昨日の続きを」と柚梨が話しかけてきたので、尚書室の扉を閉めて二人で話す。
今日も鳳珠が茶を淹れた。
「妻に確認してきましたよ。当たり前ですが、官吏同士の結婚は可能、とした方がいいでしょう。鳳珠が書いていなかったように、どちらかが異動、の条項は盛り込まない方がいいとのことでした」
「そうなのか?」
鳳珠は少し驚く。
「結婚で環境が大きく変わるのは女性の方ですからね。仕事も変わって生活も変わって、だと負担がかかる、自分だったら嫌だ、とのことです。実際、彼女も私と結婚することになって、紫州へ来た経緯は鳳珠もよく知っているでしょう?おそらく、ここに盛り込まないことで仮に通ったとしても、実際に誰かが結婚した場合にどっちかを別部署に、とかやめさせろ、など揉める可能性はあるだろう、とも言ってました」
「確かに、そうかもしれないな」
柚梨は続ける。
「それから、出産についてですが、産前、産後ともに休みが必要、はいいでしょう。期間は産前2ヶ月、産後1〜2年です。ただし、産前についてはつわりの程度が人それぞれなので、体調を見て判断、という但し書きを盛り込むといいと。禄はもちろん休むので削減ですが、ゼロにするのは良くありません。手当として半分程度出せば良いのではないでしょうか?子が生まれれば金もかかります」
「なるほどな」
「鳳珠、復帰についてこの、官位を一つ落とす、というのは、女人官吏が休んでいる間に、台頭してきた者との差をつけるためですか?」
「それもあるし、戻ってすぐにもとの様に働けるかわからないと思ったので入れた」
柚梨は一つ頷いて
「実際、官吏は貴族が多いので邸に使用人がいると思いますが、急に子供が熱を出して帰らなければいけない、などが発生した際に、”定刻を待たずに早く帰れる制度”を作っておくといい、と言ってました。こちらも禄で調整でしょうね」
鳳珠は心から感心した表情を見せた。
「柚梨、あいつはすぐにでも官吏になれそうだな」
「鳳珠が言ってくれた、想像してみて考えてほしい、というのが良かったようですよ。私の帰りが遅いので、それで子育てをしていたら、と想像して気持ち悪くなったと言ってました」
「う…それは、すまない…」
非常に申し訳なさそうな表情で、鳳珠は眉を下げる。
「そんな顔しないでくださいよ、仮にあなたの下じゃなかったとしても、官吏とは帰れない日もある者だから、と結婚する時点で何度も伝えてありましたので、問題ないですし、ある意味、私より鳳珠のこともよくわかってますからね。」
涼しい顔で柚梨がいう。
「あ、あとこれには書いていないことですが…、厠の問題を挙げてましたね。男性と一緒、というのは嫌でしょう。後宮もしくは庖厨所などの裏方が使うところはあると思いますが、まずはそこを使ってもらって、人数が増えてきたら整備、でしょうかね…配属場所によっても異なるでしょうし」
「確かにそうだな。やましいことを考えるバカもいるかもしれない」
「あの二人は夏はどうしていたんでしょう?」
「さぁ知らん。書簡まわりの時に府庫を使っていたのかもしれない。父親がいるから安心だろう。あとは後宮かもしれないな」
本当に知らないのか・・・?という疑惑の視線を柚梨から送られる。
「女の子であることは気づいていたが、厠事情まで知らん!」
気を取り直すように咳払いをしてから、鳳珠が続けた
「他に気になるところはなかったか?」
「結婚、出産に関わること以外で、官位と禄の差をつけない、というのを一番初めに書いている男女で仕事の差をつけない、というところに併記した方がいいと。”官吏になりたい”と思ってもらえる職場でないと、わざわざ辛くて大変な男社会に身を投じる人は少ないだろう、とのことでした。あとは特になかったですね」
「わかった。奥方によくよく礼を言っておいてほしい。これが通ったら何かお礼に贈ろう」
「そんな、いいですよ、私にも関わることですから。もしかしたら、どちらか戸部にきてくれるかもしれませんしね。そこのところは一つ頼みますよ、鳳珠」