黄金の約束−3
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
次の日の早朝、一行は朝早くに黄邸を辞して帰っていった。
挨拶は絳攸が代表して行った。
「天寿の姿が見えませんが?」
「あれには、別の用事をさせている。先に出ていってもらって構わないと言っていた」
「そうですか…わかりました。それでは、本当にお世話になりました」
と言って去っていった。
少ししてから
「出てきていいぞ」
と声をかけると、ひょこっと隠れていた天寿が顔を出す。
「鳳珠様、わたくしもみんなと一緒に帰った方がご迷惑でなかったのに…」
「一緒に帰ったら、道中質問攻めだろう。そうだな、秀麗からはあの人とどういう知り合いか、他の面々からはなぜ奇人邸に天寿がいたか…この姿を知っているのは燕青だけだからな。まぁ夜に帰ったら聞かれるかもしれないが」
昨晩の状況をもう一度整理しておく。
「そうですね…秀麗には、久しぶりに会った知り合い、と言っておきますわ。しつこく聞かれたら、子供の頃に邸にいなかった時にお世話になった方、とでも。父様はわかってますから問題ないと思いますけど、他の方には仕事の帰りに用事があっていきがかり上、と。燕青は、鳳珠様が秀麗に別人として接していたのをみていたので、おそらく言ってこないでしょう。どれも嘘はついていません」
春麗はさらっと答えた。
「わかった。そのつもりでいる。さて、私たちも出仕しようか?」
「あ、はい、ではおせわになりました」
「何を言っている、一緒に行くんだ」
「へ??」
昨日から何度か見せている、わかっていない時のキョトンとした顔をしている春麗。
普段大人っぽく見えるが、この表情は年相応の顔になるな、と鳳珠は仮面の下で少し笑った。
「俥に乗っていけ」
「いやいや、そんな!ご迷惑をおかけするわけには!!」
「私がいいと言っている。着いたら黎深が待っているから先に吏部に行ってこい。いくぞ」
そのまま手を引いて歩く。
「大丈夫です、歩いていきます!」というのを引っ張り、無理矢理俥に乗せた。
その様子を、家人たちが”御館様はついに少年に?”と不思議そうな様子で見ていたのを二人は知らない。
外朝について、春麗はまず吏部に向かった。
絳攸はまだ出仕しておらず、そっと尚書室に声をかけて扉に手をかける。
鍵がかかっていると思っていたそこは簡単に開いて、中にはすでに黎深がいた。
「おはようございます。黎深叔父様、昨晩はありがとうございました」
「おはよう。これを」
ぽん、と風呂敷包に入った侍童の服を渡される。
「ありがとうございます」
「衝立の裏で着替えてこい。その後、茶を入れろ」
「はい」
準備をして、机に置く。
春麗はあららめて黎深に向かい、頭を下げる。
「叔父様、鉄扇ありがとうございました」
「春麗、あれはあくまで護身用だ。自ら武器として使用しないでくれ。君に何かあったら、私は後悔しても仕切れない」
「はい…ところで、この扇なんですけれど」
と春麗は懐から出す。
「扇面が紅色なのはわかりますが、房飾りはなぜ黄色なんですか?しかも、準禁色の」
「・・・気分だ」
「へっ?」
「まぁいい、気にするな」