黄金の約束−3
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(それって、どういう…いやまさか。きっと、最近泣いてばかりだから笑うことが増えるように、自分の人生を考えられるように、という意味で言ってくださったのよね、うん。)
春麗はぐるぐると考えそうになる気持ちを、一度押し込める。
また黙ってしまった春麗を見て、
「少し話を変えよう。昼間話した女人の国試受験についてだがー」
と昼間の話に戻す。
パッと春麗の顔が上がった。
「もし開催されたら、秀麗は関係なく、お前自身は受けたいと思うか?」
「・・・?」
また春麗は黙ってしまったのを見て、鳳珠は(自分のためにしてみたいことを考えたことがないという春麗は、どうやら本当に自分の気持ちにほとんど向き合ってこなかったらしい、聞き方を変えないと答えが出ない)と気がつき、別の質問をした。
「春麗、”天寿”として春と今、戸部にきてくれているが…楽しいか?」
「はい!」
と笑顔で即答する。
鳳珠は満足そうに口の端をあげる。
「それは嬉しいな。では…今回の臨時の出仕が終わっても、また…今度は期間限定でなく、戸部の仕事ができる、と考えた時はどうだ?」
「戸部のお仕事…大変ですけれど楽しいですし、またできるのであれば、嬉しいです。鳳珠様のお手伝いができるのであれば…」
語尾がだんだん小さくなっていったが、きちんと言葉を拾って、満足気に鳳珠は頷く。
「それであれば、国試を受けてみたらどうだ?」
「!!」
ぱっと春麗は顔を上げる。
優しいが真剣な眼差しの鳳珠と視線がぶつかる。
しばらく見つめあっていたが、徐々に春麗の眼差しが落ちていった。
ちらっと上目遣いで春麗が鳳珠を見る。
「どうした?」
モジモジと、気まずそうな雰囲気を出しながら
「あの…」
と口を開くが、また黙ってしまう。
「どうした?言いたいことがあるなら何を言ってもいいぞ。怒らないし、馬鹿にもしない。」
何か思っていることがあるなら、自ら言わせないと意味がない、と思い、先を急がずに鳳珠はじっと待つ。
おそらく、今までの話の通りなら、生まれて初めて自分の気持ちに一生懸命向き合っているところだ。
こちらが推察して先回りしたら、また蓋をしてしまうかもしれない。
根気強く鳳珠は待った。
少ししてからもう一度顔をあげた春麗は
「あの、もし国試に受かったら…その…、鳳珠様のおそばで使っていただけますか?」
と尋ねた。
(何をバカな、と言われたらどうしよう…でも、何か同じ仕事をするなら、鳳珠様のおそばでしたい…)
「あぁ、もちろんだ。言っただろう?私のそばにいてほしい、と。その時は、黎深がなんと言っても、どんな手を使っても春麗は私のところに来られるようにしよう」
ぱぁっと破顔した春麗は「嬉しいです!」と飛び付かん勢いで首に抱きついてきた。
(全く…まぁ流石に伝わってはいなかったか…それでも、泣いてばかりだったのが笑顔でいてくれるなら今はそれでいい)
苦笑いした鳳珠はぽんぽんと背中をたたいてから離し、顔を見合わせて笑った。