黄金の約束−2
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ふと目をやると、先程の少年が男に突き飛ばされて吹っ飛んできた。
「危ない!」
と窓を開け天寿が飛び出る。
「おい!やめろ!」
黎深と鳳珠の声が聞こえた時に、吹っ飛んできた少年を抱きとめた。
「危ないから君はここにいなさい!」
少年に声をかけて、足元に落ちていた刀を拾う。
追いかけてきた男を一人峰打ちにして、次々に来る賊と打ち合った。
まるで踊っているかのように、鮮やかに賊をのしていく。
だが、二人がかりでかかってこられた時に、力負けして刀を飛ばした。
あっ!
塀の上から見ていた邵可は持ってきた春麗の刀を投げようとしたが、距離がありすぎて無理だった。
この距離では見守るしかない。
少しとびのいて、距離をとる。
ジリジリと二人が間合いを詰めてくる。
次の瞬間、「春麗!!」と声がかかり、黎深がものすごい勢いで何かを投げた。
一瞬振り返り、パシッと受け取る。
(これは…鉄扇!?)
握り直し、さらに間合いを詰めてきた二人に対し、姿勢を落として受け取った鉄扇で一人目は鳩尾を、ひらりと飛んでもう一人は首の後ろを打って着地した。
すぐに燕青が縛り上げにきて、「これが最後だ。すごいな、天寿」と声をかけた。
劉輝、絳攸、静蘭も天寿の動きに釘付けになり見入っていたが、チラリとそちらを見て、鳳珠と黎深のところへ足を向ける。
何も言わずに戻って行った姿に、燕青は話す気がないと判断して、縛り上げた賊をひとまとめにするため、三人の方に向かっていった。
先程の室に戻り、座らされる。
「黎深叔父様、こちら、ありがとうございました」
扇を返そうと差し出す。
だが黎深はそれは受け取らず、
「春麗、無茶をするなとあれほど私は言ったよね?」
と低い声で告げる。
「はい…申し訳ございません。あのままだと、あの少年がここまでとんできて、鳳珠様のお邸を壊してしまうと…」
「壊れたら、修理をすればいいだけだ。私も、無茶はしないようにと言ったはずだが?」
鳳珠が淡々と言う
「お邸に、賊が入ったら、奥の秀麗も無傷でいられない、と思って…」
黎深は盛大にため息をつき、鳳珠は目を見開いた。
「ごめんなさい…」
しょんぼりとした春麗に鳳珠は小さくため息をついてから、「無事でよかった」と告げ、頭を撫でる。
「怪我はしていないか?」と袖を捲って確認し、いつの間に用意したのか濡れた手巾で顔を拭いてやった。
黎深はその様子を見ていたが、
「その扇は、春麗に渡そうと思って作らせたものだ。昔言った通り、私は君に剣は握ってほしくないんだよ、だが君は勝手に剣術を学んでしまったね」
「・・・」
「武官でもない限り、剣を持つことはできない。その代わりに、それを使いなさい」
明るい室で、ようやくまじまじと鉄扇を見る。
紅色で、要に黄色い房飾りがついていた。
開くとかなり薄く、見た目には鉄扇に見えない。
「ありがとうございます…」
その後、黎深は帰るといい、鳳珠は春麗が使う室へ案内し、「後でまた来る」と言って一度出て行った。