序章
名前設定
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前日に書いておいた手紙を懐に忍ばせて、春麗は邵可に付いて府庫に来た。
初めての宮城なので、流石にキョロキョロしてしまう
「大きくて驚いたかい?」
邵可に手を引かれて府庫に入る。
「ここから出ないようにね、もし誰かに咎められたら、用事があって私についてきたと言えばいい」
と言って、邵可は仕事にかかった。
春麗は本を探しながら、手紙を託せそうな相手を探す。
しばらくして、邵可が名前は聞こえなかったが優しい声の人と話をしていることに気がつく。
遠くからじっと見つめる。やがて、一つ頷くとその人が出る時を入り口で待ち構えることにした。
「あの…」
「おや?随分可愛いお客様ですね。邵可殿のお連れさんかな?」
春麗の目線までしゃがんで話をしてくれたので、コクんと頷いて、手紙を出す。
「これを、宋太傅、という方にお渡ししていただきたいのです」
小さな女の子と宋太傅、のギャップに戸惑いながらも、「いいですよ、お任せください」と言って、手紙を受け取った。
「私が直接お渡ししましょう。その時に、お嬢さんのお名前を伝えたいので、教えてもらえますか?」
春麗はふるふると首を振って「ごめんなさい」と下を向く。
「そうですか…では、府庫であなたに会って託された、ということは言ってもいいですね?」
「はい」
「では、確かにお預かりしましたよ。またお会いしましょう」
と言って、その人は去って行った。
(宋太傅か…厄介なところだけれど、受け取ってしまったからには仕方がない)
三師の部屋に行き
「失礼いたします。戸部の景柚梨です、入ります」
と声をかけ入室する。
「珍しい人が来たもんだな」
声をかけたのは茶太保
「宋太傅にお手紙を預かってきました」
「手紙〜〜??こいつに懸想文はないだろう」
妙な声を出して霄大師が反応する。
「果たし状かもしれんぞ?」
宋太傅は嬉しそうに手に取ったが、果たし状にしては柔らかい薄水色の料紙に目を止め、「誰からだ?」と聞く。
「お名前は教えてもらえなかったのですが、小さな女の子から」
「「「女の子〜〜〜???」」」
綺麗に三人の声がそろい、宋は慌てて手紙を開く。
「ふむ…その”女の子”とやらは、どこでこれをお前に渡した?」
「府庫です」
ニヤリと笑う霄
丁寧な文の内容と、文末をみてふむ、と考えた宋は
「一度、あってみるか。ご苦労だった。」と言い、
三人は府庫へ向かった。
三人揃って府庫の前に行くと、言われた通り”小さな女の子”がきちんと礼をとって挨拶をしてきた。
少し緊張した様子で口を開く。
「わざわざご足労いただき大変申し訳ございませんでした。お初にお目にかかります。わたくしは紅邵可が娘、春麗にございます。先ほど、お手紙をお送りしたのはわたくしです。そのお手紙をお届けしたく、本日、初めて朝廷に参りました。」
「こんなちっこいのが?」
「なんの間違いじゃい?」
霄と茶がひそひそと話す。
「手紙は読んだ。なぜ私に頼むのか?」
「朝廷で一番お強い方と伺いました」
「それは正しいが…なぜ習得したいのだ?」
「大切なものを守るため、です」
春麗の真剣な表情を見て「わかった、私が教えよう」と言って頭を撫で、承諾したのを見て、二人はまた驚いた。
「明日から、服装を改めてきます」
「大方、邵可には内緒にしてあるのだろう、服はこちらで用意しよう。来られる時は邵可と一緒に毎日ここにきなさい。散歩がてら迎えに来るので府庫にいてくれればいい」
「ありがとうございます」
「こんなに可愛くて女子らしいのに、剣とはのぅ」
霄が何やら考えながら言う。
「まだ幼いのに、ここまで所作も完璧、これは末恐ろしいものだ」
茶太保も何やら考えながら言う。
「ではまた明日」
初対面は緊張した割に呆気なく終わり、三人は戻って行った。
(クソジジイって黎深叔父様おっしゃっていたけど、そうでもなさそうに見える)
きちんと見送ってから、春麗も府庫に戻り、本の世界に没頭した。