黄金の約束−2
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離れに入ると、「おや秀麗ちゃんたちじゃないかね?」という声がした。
見れば、葉先生がいた。
「姫さん、知り合い?」
「ええ、私が小さい時からお世話になっている葉棕庚先生」
「秀麗ちゃんにはちと手伝いをしてもらおうかの」と秀麗を連れて奥の室へ入っていく。
正直、この場に秀麗がいなくて気持ち的には助かった。
どうやら翔琳少年と燕青は関わりがあるらしい。
なんだか頓珍漢なやりとりを、鳳珠様と二人で並んで座って見届ける。
葉先生が戻ってきて、石斛の生薬があれば助かる、という適当な話を聞いて翔琳少年が飛び出していく。
(絶対、適当に言ってる・・・)と思ったが、突っ込まずに黙っていたら
「石斛の生薬ならうちにもあったはずだが。滋養強壮の薬だろう」
と鳳珠様がつぶやいた。
「まぁ何かやってたほうが気が紛れるからのぅ。それにしても…」
葉先生が
「いやぁ、往診に来てこんな美人さんに会えるとは、ついているのう。わしの長い人生でも全く滅多に拝めない美人さんじゃ」
とすり寄っている。
「しかしなぜおなごじゃないかのう」
とペタペタ胸を撫で始めた。
怒りを抑えた超絶美人の眼差しは射殺すぐらいの効力があるが、それに全く動じずペタペタ触っている。
すっと手を伸ばした鳳珠の手をそっと掴み、「だめですよ」と言うと、こちらを向いてじっと天寿の顔を見てから、鳳珠はそのまま手を下ろした。
「何、わしをぶっ飛ばそうとしたじゃと?激しいところも魅力的じゃなー」
全く動じず楽しそうにしている葉先生。
仮面を外した鳳珠様はなかなか好戦的だ。
またしても怒りが増す鳳珠様の手を両手でキュッと握り、首を振る。
大きくため息をついて、どかっと座り直した鳳珠様を見て、一応安心する。
一連の動きを、燕青が面白いものを見るように眺めていた。
秀麗が出てきて燕青に尋ねる。
「燕青、うちまで文出してくれた?ご飯どうしよう?」
「なぁ姫さん、今日はここに泊めてもらおうぜ。気になるじゃん、曜春少年の容体。もう片方は裏山へ飛んでいってしまったし」
なんだかんだとやり取りしているが、燕青が強引に進めている気がする。
「…はぁ、まあ、もう文出しちゃったなら仕方ないわね。ええと、ではすみません、通りすがりの親切な方。ご好意に甘えて一晩ご厄介にならせていただきます」
(秀麗はやはり気付いてない、と。いつもの官服着てるし、”天寿”がいるからわかりそうなものなのにね)
丁寧にお辞儀をして、葉先生と奥の室に引っ込んでいった。
直後、絶対零度の美声が響く
「…燕青、いつの間にそういうこといなったんだ?お前、文なんぞ書いてないだろう?」
「え、はははー今から書きます、今から。ってことで、一晩だけよろしくおねがいします」
「なぜ」
「邵可さんとこに迷惑かけると、ある人に殺されちゃうんで。通りで翔琳が大騒ぎしてくれたおかげで、多分他の連中にも気付かれちまったから。今回が山場かなーと」
「つまり今夜ここに『団体客』が来るということか」
やりとりが続いて、最後に
「好きにしろ。ただし私は手伝わないからな」
と言って、一度室を出て行った。
「で、天寿、なんでいるんだ?」
二人だけになり、ようやく燕青が聞いてきた。
「そうね…色々あったんだけど、いきがかり上、と言っておこうかな」
(嘘はついてない、うん)
”天寿”の声を出して普通に答えた。