黄金の約束−2
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(叔父様からも余程の相手以外には仮面を外したことがないと聞いている。けれど…)
最近、存在が近かった。
春の後宮で女官姿の時に慰められた腕も、倒れたときにもらった手紙も、そしてあの雷の日にそっと抱きしめてくれた腕も…どんどん存在が近くなっていった。
見知らぬ後宮女官には仮面を外した素顔を見せたのに、侍童姿の天寿の時は隠そうとされた。
(同一人物とは知らないから仕方ないけれど、だからこそ余計に…)
チクリ、と胸が痛む。
立ち止まって、両手を胸にぎゅっと当てて下を向く。
戸部から出て程なく、下を向いて立ち止まっている天寿がいた。
「天寿」
声をかけて近寄ろうとしたら、ビクッとした様子で肩を揺らし、振り返りもせずに徐に早歩きで歩き始めた。
追いつくのは造作もないが、同じ距離を保って追いかける。
建物を出たあたりで、もう一度「天寿」と呼びかけると、ピタッと足が止まった。
そのまま近づき、「一緒に来い」と言って右手首をとり、そのまま歩く。
半ば引っ張られるような感じで、天寿は後をついていった。
そのまま俥に乗せられる。
右手首は掴まれたままだ。
隣に座り、走り出した頃に、もう片方の手で黄尚書が器用に仮面を外した。
「黄尚書…」
「この顔を見ると倒れたりする者が多くてな。天寿は…大丈夫だと思ったが、それでも急のことだったし、倒れたり距離を置かれたりするのが怖かった。すまない」
少し切なそうな顔をして、天寿を見つめる。
(倒れはしないけれど、流石にじっと見つめられると緊張する・・・)
天寿は目を閉じてふるふると顔を横に振った。
「そうだな…私たちは似た者同士かもしれないな」
天寿は話の展開についていけず
「どういう、ことですか?」
と聞く。
「姿を…隠しているところが。私は顔を」
掴んでいる右手首をひょいとあげる。
「お前たちは性別と名前をな、紅春麗」
「!!」
ハッとして黄尚書を見る。
「そ、それは…」
戸惑った表情の天寿に、尚書は決定打を告げた。
「そうだな…いつから、というところから話そうか。春に…もしかして、と思ったのは最初に後宮であった次の日に、書簡の追加を頼むときに」
またひょいと右手首を上げる
「ここを掴んだ時だな。その後、例の茶太保の件の時に、戸部の前で倒れていた時に抱えて確信し、黎深を問いただした」
(叔父様が答えていたなら、これ以上隠すことは得策ではない…)
「そう、でしたか…申し訳、ございません」
(やはり後宮で会った時はまだご存知なかった…)
項垂れて下を向いてしまう。
「夜に後宮で会った時に仮面を外していたのは偶然だ。気分転換に散歩をしていたのだが、あの時間で誰かに会うとも思わなかったから外していただけだ。琵琶の音に惹かれて見に行ったのだが、まさか天女の琵琶姫と顔を合わせることになるとは思っていなかったからな」
ぱっと顔を上げて視線を合わせる。
柔らかい表情で天寿を見つめていた。
心の中を読まれてしまったのだろうか
(どうして…!)