黄金の約束−2
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「うおっ!?こ、こんなところに怪人仮面男がー曜春!ここは死んだふりだ!」
「お、お頭!それはクマと出会ったときです」
「ハッ、そ、そうか。怪人仮面男の対処の仕方はー塩だ!」
飛び込んできた全身黒づくめの少年二人。
お頭は塩袋を取り出し、黄尚書に向かってぶちまけた。
黄尚書は無言で仮面にかかった塩を拭った。
景侍郎はその仕草に内心うめいた。
(…お、怒っている…)
近頃では珍しいほどに。…これはまずい。
「き、君たち、悪いことは言いませんから、ね。今のうちに近衛の方に捕まった方が」
黄尚書が後頭部に回った仮面の紐に手をかけた。
「あっ、いけません、鳳珠!」
止める間もなく解いた紐がはらりと落ち、追って仮面が外された。
それから黄尚書は黙って腕を前に出して少年たちに手のひらを向けた。
「うわわ、手加減してあげてください鳳珠!あなたは気功の達人…っ」
「曜春やばいぞあの男、我々を石にする気だっ!目を合わせちゃいかん!」
「ええ。まだ仮面してた方がマシでしたねっ」
あからさまに表情に青筋を立てた黄尚書は言った。
「…人の顔をごちゃごちゃと…私は猛獣か?」
「まずい、これは相手が悪いぞ曜春っ。よし」
あっという間に駆け出した。
「ちっ、逃げ足の早い…」
「なんか騒がしいけれど何かあったんですか?」
物音を聞きつけたのか、資料室からふらりと天寿が出てくる。
「うぁぁ〜〜〜、天寿くん!!こっちへきてはいけません!!!」
景侍郎がいつになく大きな声で騒ぐ。
「え?」
と言ったものの、そのとき既に、資料室から天寿は顔を出したところだった。
急いでつけようと、仮面を手にした黄尚書と天寿が見つめ合う。
「あぁぁ、天寿くん…」
柚梨が心配そうに見つめる。
「・・・」
「柚梨、天寿は大丈夫だ」
「えっ?…でも…」
柚梨が見る限り、天寿は固まっている。
が、ちょっと切なそうな表情になり、
「ようやく、お顔を拝見できました」
と告げた。
「天寿くん、この顔見ても大丈夫なんですか?」
柚梨はまだ心配そうに様子を見ている。
視線を柚梨に移した天寿が、
「景侍郎、腰につけていらした鍵は?」
と気がついた。
別の意味であわあわする柚梨に
「多分ぶつかりしなに持っていかれたんだろう、私に塩をぶちまけた方の手にそれらしいものが握られていた」
「ちょ、嘘でしょう!?なんでそんなに落ち着いているんです?」
「僕、探してきますね」
と言って、走り去るように室を出た。
仮面の塩を払い、手巾で拭ってからつける。
「天寿くん、あなたの顔を見ても大丈夫そうでしたけれど、ちょっと辛そうな顔をしていましたね。私が来るなと止めてしまったからでしょうか?」
「…いや、私も急いでつけようとしていたから、それを感じ取ったのかもしれないな」
「悪いことをしてしまいました。春からの付き合いで、天寿くんならあなたの顔に左右されることはないだろうと薄々思ってはいたのですが…」
「探してくる」
尚書は、鍵を、とは言わなかった。
意味を理解した侍郎は、その背中に声をかけた。
「必ず見つけてくださいね!」