黄金の約束−4
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そのやりとりを室の外から眺めていた春麗は、邵可が柳晋を抱きかかえたところで、(やれやれ)とため息をついた。
次の瞬間、意識が一瞬遠のいて、ガクッと膝から崩れ落ちかける。
あっ、と思ったところ、背中から肩を掴まれて、なんとか崩れ落ちずにすんだ。
「大丈夫か?」
片手で器用に支えながら、もう片方の大きな手がそっと春麗のおでこに当たる。
「冷たくて気持ちいいです」
春麗はほわっと答えた。
「気持ちいいです、ではない。私の邸では絶対大丈夫だと言い張って葉医師に触らせなかったが、やはり熱を出してるな。室まで運ぼう」
ひょいと抱きかかえられる。
「ちょ、っと、黄尚書、大丈夫ですってば!」
「いいから黙って運ばれておけ。春麗のことだ、皆には知られたくないだろう?室はどっちだ?」
(もう。なんだってこんなにお見通しなのかしら)
春麗は小さくため息をついた後、観念してからあっちです、と指をさした。
春麗の室は暗かった。
「灯がいるな」
「ここで大丈夫です。ありがとうございます」
大丈夫、というのを鳳珠は全く信用せず、扉を開けたまま外の明るさを頼りに、寝台に腰掛させる。
「少し待ってろ、すぐ戻る」
ぽんぽんと頭を叩いてから、鳳珠は扉を閉めて、そのまま元きた道を戻る。
見れば黎深は未だ秀麗の室の扉の裏でしゃがみ込んでぶつぶつ言っていた。
これはもう少し復活するまでにかかりそうだ。
他の者たちはどうやら別のところに移ったらしい。
ちょうど、秀麗の室を出ようとした邵可に声をかける。
「邸で少年を見てもらった時に、葉医師が春麗姫もこれから熱が出るかもしれない、と言っていましたので、一緒に来て俥で待ってもらっています。先ほど、話を聞いている最中に倒れかけたので室まで運びました」
「それは…お手数をおかけしました。気づかなくてすみません」
「室に灯と火鉢がないので持っていってやりたいのですが。あと、心配なので葉医師に見てもらいましょう。私が呼んできます」
「お願いします。では私は灯りを用意しますね」
邵可は灯と火鉢をを用意し、灯を鳳珠に渡してから火鉢を抱えて葉医師と一緒に廊下を歩く。
「春麗ちゃんの方が正直少年より酷かったからのぉ、厚着していたとはいえ、少年を庇っていたというから冷えはきつかったじゃろうて。診ることを申し出たが断られてのぉ。様子を見た別嬪さんが一緒に来てくれといってくれたのでよかった」
葉医師の言葉を聞いて、邵可は目を丸くした。
てっきり賃仕事に行っていたとばかり思っていたのに、どうして山へ行っていたのか、皆目見当がつかなかった。
「春麗ちゃんは昔から我慢強いからの、具合が悪くなってもこっそり自分で
厳しい表情になった邵可を鳳珠は目の端でとらえた。
そんな様子も気に留めることもなく、笑いながら葉医師は薬の入った箱を抱え直した。
「春麗、大丈夫かい?」
邵可は声をかけて室の前で少し待ったが返事がないので、扉を開けた。
見れば、寝台の下で春麗は倒れていた。
「っ…」
鳳珠は机案の上に灯を置いて、春麗を抱き抱える。
先ほど抱えた時より、明らかに熱が上がっていた。
「さっきより上がっている。葉医師、お願いします」
「春麗ちゃんのことはよくわかっておるからの、任せなさい」
邵可は寝台近くにあった火鉢にも炭を足し、一つは足元の方に置く。
その間に鳳珠が燭台に灯を移していた。
「黄尚書、何から何まですみません」
「いや…秀麗殿にかかりきりでしたから仕方ないでしょう。少年と会えていて、一緒に邸に来てくれてよかった。薬を飲むのに白湯がいるでしょう、もらってきます」
「別嬪さん、ついでにこれを煎じてもらってきてくれないかの?水から火にかけて、沸騰したら三分じゃ」
「わかりました、頼んできましょう」
邵可は色々聞きたいこともあったが、”別嬪さん”と呼んでいることについて気になって、突っ込めずにいるうちに、鳳珠が出て行った。
そのまま邵可は少し心配そうに春麗を覗き込んだ。
「紅
「・・・そう、ですね…妻は、いつも春麗のことも気にかけていましたから」
邵可は肩を落として、春麗の机案の前にある椅子に座り込んだ。
「まぁ、秀麗ちゃんにかかりっきりになるのは昔からだし、わからなくもないがのぉ。春麗ちゃんは、一人でなんでもこなしてしまう。おやおや、大丈夫と言っておきながら足先をこんなに赤くしてかわいそうに」
薬を塗りながら丁寧に包帯を巻く。
「こんなになるまで言わなかったと別嬪さんが知ったら怒るじゃろうて。随分心配しておったからの。別嬪さんの邸であんなにやりあうとは思わなんだ…春麗ちゃんも周りを優先したり、我慢強いのはいいのだが、もう少し自分を労ってあげないとのぅ」
(のぅ、紅仙)
葉医師こと黄葉は心の中で問いかけた