黄金の約束−4
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黎深の空回り騒動がひと段落した頃、静蘭が扉の外から声をかけた。
「旦那様。お食事の用意ができました」
「秀麗はよく寝ているから、先に私たちがご飯にしてしまおう。静蘭。お客さまの分も用意してもらえるかい?」
扉を開けながら言った邵可に、静蘭が「…は?」というのと同時に、後ろにいた絳攸が「げっ」と声を上げた。
「な…なんであなたが!」
「叔父が姪を見舞いに来て何が悪いんだね。君こそ私の知らぬところで随分抜け駆けをしているようだね、絳攸」
明らかに殺気丸出しの、怜悧冷徹氷の長官の表情で、黎深が言い放った。
「いい度胸だ、後で覚悟したまえ」
プイ、と背を向けて歩き出す後ろ姿に、(なんで俺、この人の養子なんだ)と落ち込む絳攸。
気の毒に、と楸瑛は見てから門の外に客人が来たことを邵可に伝えた。
訪ねてきたのは秀麗が川に落ちる原因を作った柳晋の父だった。
聞けば、昼過ぎに山に行くと言って出て行ったきり戻っていないとのことで、秀麗との話を聞いてもしかしてこちらに、と思って寄ってみたとのことだった。
「お待ちください。晋くんは山へ行くと言って出かけたのですね。子供の足で昼に出て夕方には帰って来られる山といえば…」
「奥様のお墓のある龍山ですね」
「龍山なら馬でも回れるね」
静蘭と楸瑛の答えに、絳攸が続いた。
「じゃあ俺はその間に紅邸から防寒具一式と松明を用意してくる。いいですよね?黎深様」
「好きにすればいい、だが雪山で遭難したらいかにお前の知識が豊富でもまるで意味のないことを覚えておけよ」
「…はい」
黎深の言い草にため息をついた邵可は、徐に黎深の扇を取り上げて、ペシっとおでこを叩いた。
「黎深、そういう時は「充分気をつけて行きなさい」というんだよ」
「…はい、兄上…」
おでこを抑えながらどこか嬉しげに喜ぶ黎深と反対に、絳攸以下、柳晋の父まで目が点になっていたのは言うまでもない。
「ところで、春麗姫は不在のようだな」
徐に黄尚書が口を開いた。
「そういえば…そうだね」
「いつもの夜の賃仕事じゃないですか?」
邵可も静蘭もさして気にしていない様子で答える。
今はそれどころではないという感じで、邵可が続けた。
「時間が惜しいから馬は紅邸から借りましょう。藍将軍、静蘭は絳攸殿と紅家へ、柳さんは龍山へつながる道の方を探してください」
パパッと采配を振るう。
「龍山なら私の邸の方が近い。見つかったら運び込むといい、これから戻って手配しておこう」
「ありがとうございます、黄尚書」
颯爽と去る鳳珠に向かい、黎深が「携帯用仮面まで用意して!」とキリキリしていた。