黄金の約束−1
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書簡周りを終えて、戸部に戻るとき、秀麗の姿をみかけた。
(あれは…!)
秀麗の横に、紅い男がいた。
どうやら、荷物を持ってあげているらしい…
(れ、黎深叔父様…)
あの様子だと、自分が叔父様とは名乗ってないわね…
危うくガックリして座り込みそうになる気持ちを奮い立たせ、努めて明るく声をかける。
「秀!」
「あー天寿…」
振り返った秀麗がのほほんと答える。
ぷ。
(叔父様、悪戯が見つかった子供みたいに顔が引き攣ってる…)
黎深にきちんと礼をとり、「秀、あとでね!」と言って去る。
「今の子は知り合い?」
黎深は秀に尋ねる。
「はい、一緒に戸部で仕事してるんです。何をやっても早いし、正確で、難しいことも任されていて…初めは差がついてる、って焦っていたんですけど、最近は諦めたというか…」
「秀くんは秀くんの速度で、物事を進めていけばいいんじゃないかな?焦ることもないし、諦めることもない」
「おじさん…」
キュ〜〜ンとうるうるしている黎深を、周りは不気味な顔をして見ていた…
翌日、朝一で吏部に行く。
「おはようございます」
毎日顔を出しているせいか、仕事の山は小山にもなっていない。
いつも通りお茶を淹れて、黎深の前に出す。
「黎深叔父様、昨日のあれ、なんなんでしょうか?」
冷たい視線でチラリと見る。
「いや、あれは…あいつにこき使われている秀麗がかわいそうでね…」
「どうして、叔父だと名乗らないんですか?」
「こ、心の準備が…」
はぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜
どうして、こうかなぁ…
「いつも言っていますでしょう?早く名乗らないと、一生名乗れなくなりますよ、って」
「・・・」
(黎深叔父様、この世の終わりみたいな顔しないでください)
しばらく放置してゆっくりお茶を飲んでいると立ち直った黎深が
「春麗は、戸部では何をやっているんだ?」
と聞いてきた。
「そうですね…秀麗と同じ書簡周りと、午後は大体机仕事です。書類写したり、まとめたり」
「そんなことまでさせられてるのか!」
パチン、と扇を手のひらで叩く
「そんなこと、って…そうですね、侍童にさせる仕事ではないでしょうね。でも戸部は尚書と侍郎と、今はあと二人しかいらっしゃらないですから、簡単なことぐらいはお手伝いしないと…」
どことなく楽しそうに答える様子を、黎深はじっと見ていた。