はじまりの風−2
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モヤモヤしている時は体を動かすに限る。
定刻を過ぎ、春麗は三師の室に入って、「今日は勝負しましょう」と宋太傅に告げる。
「今日はなかなか手強いのと朝に一本やったから、疲れておるんだがのう」
と意味不明に勿体つけられた。
「今日、つきあってくれなかったら一生勝負しません!」
と言ったら、すぐに木刀を持って引っ張られた。
昨日と同じ場所で、同じように構えて勝負をする。
「少しカンが戻ってきたか?動きが早くなってきたな」
「くっ!朝もやってて、これなんなの!?」
防戦一方である。
たんっ、と一度離れて、少し呼吸を整えて、再度挑みかかる。
飛んで背後に周り首の後ろに刀を当てたのと、後ろを見ずに自分の首に刀を突きつけられたのがほぼ同時だった。
「今日は引き分けじゃわい」
といつの間にか来ていた茶が言って、
「わしの勝ち〜」と喜んで何かを受け取っていた。
「全く、何を賭けてるんですか!!??」
「梅饅頭じゃよ」
ガクッとその場に項垂れた。
「もう一本やるか?」
「勘弁!無理!」
と答えて、立ち上がり、彼らと別れる。
体はクタクタだったが、心は少し晴れた気がした。
今日もそんな様子を府庫の小さな窓から見つめる目線。
邵可、黎深と一緒に来ていた鳳珠である。
「黎深、天寿は何者なんだ?」
「知るか、なぜ私に聞く?」
「あれだけしょっちゅう来て構っていたら知っているだろう、だいたい君は、普段は兄君一家以外はぺんぺん草じゃないか!」
あまりに的確なツッコミに、邵可は吹き出しそうになるのを堪えた。
「知らないものは、知らない」
なおも答えない黎深。
「では、あの刀をふるっている、彼女、は誰なんだ?」
「…」
答えない黎深に、鳳珠は黙って後ろを振り返る。
邵可と目が合ったが、こちらも黙って首を振られるだけだった。