はじまりの風−2
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「邵可様、こちらをお返しに参りました」
「あぁ、ご苦労様。続きは何冊かい?」
「3冊お願いします」
(秀麗と昨日は床を共にしたと思われている…そろそろ来るかしらね)
春麗は邵可の横に立ち、小声で「父様」と告げる。
邵可は黙って奥の部屋に向かい、後ろをついていって扉を閉めた。
「なんだい?春麗、まぁ座って。」
椅子に腰掛け、話始める。
「父様は、秀麗と主上の昨晩の話を聞かれた?」
「あぁ、添い寝したって話だろう?随分と劉輝様に気に入られたようだね」
(やっぱり…)
春麗は少し遠くを見てから、徐に尋ねた。
「ねぇ、黎深叔父様から、何か渡されなかった?」
邵可は少し驚いた顔をして、黙っているべきか迷ったが隠すことは得策でないと思い口を開いた。
「絳攸殿経由でね、秀麗に銀の茶器を」
ふむ、と顎に手を当てて(さすが黎深叔父様)と春麗はまた少し考えた。
先に受け取っていた花簪をまだ外して使う場面はないが、”毒の確認の時に使え”と言われたけれど、やはりあれは動き回って確認しろ、ということだろう。
黎深邸に通っていたときに毒の耐性を少しつけられた自分はともかく、銀の茶器の本当の使い道を、秀麗がわかるとも思えない。
思考の沼にはまったのか、難しい顔をして考える春麗に、邵可は少し不安を感じた。
「春麗の分も頼んでおこうかい?もっとも、黎深は誰より君を案じているから、すでに用意しているかもしれないけれどね」
「あぁ、わたくしに茶器は不要ですわ。自分のことは全て自分でしているし、狙われるとしたらわたくしではないと思うし、すでに銀の簪をいただいてるしね」
あっさりと言い放つ様子に、少し肩を落として答える。
「それでも私は君も心配だよ、春麗」
「ありがとう父様。秀麗のことはわたくしができる限り守りますから、心配しないで。ただ、昼間はみてあげられないので、お願いね」
「…だから君が心配なんだよ、春麗」
邵可の不安が目に見えて形になりかけている。
このままだと、春麗は身代わりをも厭わないだろう。
「大丈夫、”紅家直系長姫の秀麗”には手はださせない、決してね…じゃあ、戸部に戻るわ」
ひらひらと手を振って室を出ていった。