はじまりの風−2
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次の日の朝、寝れなかったせいかいつもより少し遅く起きたら大騒ぎになっていた。
王と秀麗が床を共にした、ということらしい。
(絶対何もなかったと思うけどね…)
自分も大概疎いが、秀麗は輪をかけて異性方面に疎い。
添い寝したぐらいよね、と思って確認に行こうかと思ったけれど、逆を想像したらそれも嫌だったので、朝は顔を見ずに外朝に出た。
(私だけドギマギすると変よね、気がついてないんだもの)
「よし!」と気合を入れて戸部の扉を開こうとしたら、後ろから
「気合が入ってますね〜天寿くん、おはようございます」
と景侍郎が声をかけてきた。
ちょっと恥ずかしい・・
えへへ、と照れ笑いをしてから挨拶し、戸部の扉を開き、先に入ってもらう。
なんとなく後ろをついていくことで安心感があった。
「黄尚書、おはようございます」
「おはよう」
どうやら、通常運転らしい。これなら大丈夫かも。
「朝一番で悪いが、これを礼部に届けてくれ。”人数ばかり多くてロクに計算もできないのか、出し直せ”と伝えろ。それから府庫にこれを返してきて、続きを3冊もらってこい。戻って来たら吏部あての書簡があるので行ってもらう」
「わかりました!」
持ち物を用意して「では行って来ます」と出ようとしたら、「ちょっと待て」と声がかかり、右手首を掴まれた。
「!」
ビクッとかたまり、それからゆっくり振り返る。
「・・・」
見つめ合う視線と角度は昨夜と同じで、少しの間があいた。
「あ、あぁすまない、これは兵部に届けてもらいたい。伝言は不要だ」
「わ、かりました。行ってきます…」
春麗は戸部を出て、荷物を抱え直しながら、そっと左手で右手首を掴む。
やっぱり触られたところはまた熱くなっていたが、ふるふると首を振って歩き始めた。
その頃、黄尚書はどさっと椅子に座り、少し呆然としていた。
(天寿のあの手首の細さはなんだ?昨日の女人と同じだった…)
体つきは異なるように見えるが、確かにみた手首は白く、侍童とはいえ男のものにしてはしなやかな肌だった。
たった今まで思ったことなかったことに思い当たる。
(まさかな…)
しばらく思いを巡らしてみたが、考えても仕方がないと息を吐き、意識を頭から追い出すように仕事に没頭した。