黄金の約束−1
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外朝仕事が10日ほど経った。
秀麗も燕青も、もちろん春麗も調子が掴めてきた具合だ。
相変わらず、4日に一度の”食事会”の後、秀麗は絳攸に勉強を見てもらっていた。
「今日は春麗も一緒にどう?」
秀麗は好意で誘ったが、「私は片付けしておからいいわ。秀麗はしっかり絳攸兄様に教わりなさい」と断られてしまった。
戸部での仕事の差と、春麗がどこまでできるかわからないなりに、勉強会にも参加しないという様子に、秀麗の焦りが募る。
洗い物をしていたら、燕青が入ってきた。
「春麗姫さん、秀麗姫さんに隠していることがたくさんあるだろ?秀麗姫さん、戸部で比べられているんじゃないかって、今かなり焦ってるぜ」
と声を掛ける。
「そう、かもね。でも秀麗が目指すところがあるなら、自分で乗り越えないといけないところでしょ?秀麗とわたくしの仕事の仕方が違うだけですわ。燕青殿はなぜそうなのかお分かりじゃない?」
春麗は容赦無く答える。
「まー確かにな。でも、追い詰める必要はないんじゃね?」
「…わたくしは、何もしていませんわ。追い詰めてもいないし、わたくしのやることをやっているだけ」
カッとなった気持ちを、深呼吸して抑える。
(秀麗も、静蘭も、父様も、そして物事が見えると思った燕青も、わたくしの気持ちには気付かない…そして最近、このことでイライラするようになってしまった…)
悲しみが胸を支配するのを、振りきる。
形勢逆転の一手として、話をガラッと変える
「燕青殿。燕青殿は、茶州州牧、浪燕青殿ですよね?」
「!!…なぜ、それを?」
「国試は愚か、州試も通っていない州牧、ということで、はっきり言って興味を持っていました。そして、茶州は鄭悠舜様が州伊でいらっしゃいますからね」
燕青は目を見開く
「春麗姫さん、悠舜を知っているのか!?」
「幼い頃にね。悠舜様が覚えているかはわからないけど…多分、初対面が強烈だったと思うから、わかってくださるとは思うけどね」
ふと、その時泣きついた鳳珠様の戸惑ってあやしてくださった顔を思い出し、微笑んだ。
「へぇ〜悠舜と、ね。なるほど、茶州に帰ったら一番に報告するな!」
春麗は何も言わず、口角を上げて答えの代わりとする。
「秀麗姫さんは官吏になりたい、という思いを持っているようだけど。春麗姫さんはどうなんだ?」
(さすが浪燕青、逃がしてはくれないわね…)
「そうね〜」と言いながら。考えをまとめる。
「今の時点では、なんとも」
これが素直な気持ちだ。
「わたくしは、秀麗みたいに、自分も思いに真っ直ぐではないし、自分のことがよくわからないの。だから、多分、すべてのことにおいてギリギリまで悩むと思うし、決断もできないかもしれない。スパッと道を選べる秀麗が羨ましいわ」
燕青にはこのぐらい言わないと許してもらえないだろう。
本当は言いたくなかったけど。
「なるほど、な」
わかったのかわかっていないのかわからないが、燕青はもっともらしい相槌を打った。
わたくしの気持ちは…誰にも理解されなくていい。
秀麗の嫉妬も、静蘭と父様の非難も、おそらく突如現れた燕青の疑いも、全て受け止める。
それが、秀麗を中心に紅家が回る、と知って、紅家直系長姫の座を秀麗に明け渡した覚悟なのだから。
生まれた時から、気持ちに蓋をして生きてきた、わたくしの役割…
室に戻ってから、ギュッと自分を抱きしめて、夜を過ごした