はじまりの風−2
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一ヶ月近く経ったころ。
(あ〜もうなんで、午後に府庫の用事言いつけるのよ〜)
と言ったところで、事情を知らないのだから仕方がないと、いつものように書簡を抱えて戸部を出た天寿はため息をつく。
(今日は、礼部、兵部、吏部、府庫…の順番ね、届けるだけの礼部と兵部、吏部は3日ぶりだから叔父様の仕事が溜まっているから仕事だけさせて、そうこうしているうちに秀麗の勉強会は終わっているでしょうから府庫に行って戻ったらお茶、と)
予定を組んで、早歩きで歩き始める。
吏部では黎深がいたので、直接手渡す。
最近は戸部にきてお茶をしていることが多いため、仕事が溜まっていた。
「今日はちゃんと仕事を片付けてくださいね。明日はここでゆっくりお茶しましょう」
と言い渡すと、ゲンナリした黎深を励まして仕事をさせて、そそくさと府庫へ移動した。
邵可から最近の秀麗たちの様子を聴きながら話をしていたら、避けて通ってた絳攸兄様と藍将軍がやってきた。
まずい、と思ったので、さっと脇へ逸れて立礼しておく。
「珍しいですね。邵可様が侍童とお話ししているなんて」
藍将軍が話しかけてきた。
「あぁ、この子かい?この子は」
「戸部の手伝いをしている天寿と申します!」
なんとなく嫌な予感がして、面倒なことになる前に名乗っておいた。
「そう、最近、黄戸部尚書のお遣いでよく来てくれるから仲良くなってね。こちらは藍将軍と李吏部侍郎、王の側近でもあるんだよ」
のほほんと教えてくれる。
(父様、王の側近ならわたくしの正体、気づかれたらまずいのわかってますよね・・・?)
春麗から見て、どうも邵可というのは頼りないところがある。
時折、厳しい表情を見せるのだが、普段はそれを隠していてボケたふりをしている。
母様は、”昼行灯”って言ってたか…
「黄尚書の遣いをやっているなんて、できる子なんじゃない、絳攸?」
「さぁ、どうだかな」
さして興味のなさそうな絳攸を見て、気づかれていないことにホッとする。
「邵可様、ありがとうございました。では失礼いたします」
さっさと去るに限る。
背を向けて歩き始めた背中に「お茶でもしようと思ったのに」という父の少し寂しそうな声が聞こえた。