紫闇の玉座-6
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
戸部の扉の前に一人の男が立った。
「紅春麗はいるか?」
「あらリオウ殿?ちょうど出るところだったのよ。歩きながら話しましょう?」
手に荷物を持った春麗がすぐに出てきて、二人は並んで歩く。
「そろそろ
「父様の話だと、療養休暇って言ってるけど、もうだいぶいいみたいね。あと1日の命、だった、んでしょ?」
「どうしてそれを!?」
リオウは驚いて立ち止まった。
「うん…ちょっとね。珠翠から、一度だけ文がきて、それに大まかに書いてあったの。もし会えたらそれが最後だから、そのつもりでいた方がいい、とね」
「あいつ、刺さった矢の治療をせずに主上にこの世の別れを惜しまれていたんだ。俺たちがひっぺはがした。あいつは単に過労と空腹で気を失っただけなんだけどな」
思い出したかのように笑う。
「ほんっっと、どこか抜けてるのよね、主上って…リオウ殿はこれからもさらに苦労するかもね?」
意外と容赦ない春麗の一言を聞いたリオウはがっくりと肩を落とした。
「そういえば、秀麗の後宮入りについてはタンタンさん?達が反対署名投げ込んでいるとか、色々聞いているわよ?」
「あぁ、俺が迷惑している。あいつら、頭が悪いんだかイイんだか知らないが、仙洞省にやたら投げ込むんだ。だから、これから鄭尚書令に反対だと文句を言いに行くつもりだ。それをお前に伝えておこうと思って」
「ありがとうございます、リオウ殿」
微笑んだ春麗をリオウは少し眩しそうに見た。
「お前は…お前は、変わらないな。俺が旺季の孫で公子として扱われた時も、
「そうですわね…確かに、仕事で立場が変わることはありますけれど…リオウ殿は、リオウ殿ですわ。上手くいえないけれど、わたくしにとってのリオウ殿が変わっているわけではありませんもの」
「そうか…黄尚書は、お前のそんな素直なところも好きなんだろうな…」
聞いて赤くなった春麗に向かって少しだけ微笑んで、じゃ、と言って去っていった。
春麗は、回廊から外の庭院へ視線を移した。
桜の花が風でざぁっと流れた中に、悠舜が見えて足を向けた。