紫闇の玉座-6
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ガン、と剣の撃ち合う音がする。
ややあってハッと気づいた陵王は打ち合った時に一度止めた。
「それが…お前の答えかっ!!ふざけるなぁっ!!」
大音量の怒声に怯むことなく、春麗はフッと笑った。
「ようやく、気づかれましたか、孫尚書?」
怒りで一段動きと力が上がった孫陵王に、春麗も一段動きを早めた。
「お前の剣、宋隼凱そっくりだな。戦ったことがある俺に勝てると思うか?」
「さぁ?」
(おそらく、一撃で動きを止めないことには難しい…)
本気になりつつある陵王に、想定内だが力負けするのを避けるために、春麗はどんどん動きを早めてかわしていく。
「おい、鳳珠、どうすんだよ?」
飛翔の問いに何も言わず、仮面の顎に手をかけて鳳珠はじっと春麗を見つめた。
(なんとなく予想はしていたが、やはり刃のない刀だ。春麗のことだから打ちのめすことはしないだろう…負けることはないと思うが、完全に勝つこともできない…孫陵王のあの刀では春麗の命が危ない、そろそろか…)
二十合目を過ぎたあたりで、鳳珠は考えながら時期を見計らっていたら、悠舜が杖をついて一、二歩歩いたところを制して、一人の老人がひょこひょこと歩いてくるのが見えた。
打ち合う二人と自分たちのーいや、自分の様子を見ながら近づいてくることに気がついた鳳珠は、春麗と孫陵王が間合いをとった隙を見計らって、二人の間の地面に気功を一発ぶつけた。
土煙が上がり、二人がパッと飛んでさらに間合いを取ってから、揃って鳳珠を見る。
鳳珠が黙ったまま指を差した先には、仙人のような老人が立っていた。
「陵王、やめろ。その姫さんにお前は勝てない。わかっているだろう?あれが斬れない刀だと」
「くっ…なぜ、それを?もしや…」
「そうさ、俺が打った”人を斬れない刀”だ。銘はない。そこの姫さんから依頼の文をもらって考えていたところで、黄家当主からの文で、身内の嫁が欲しいと言っているからぜひ打ってほしいとも頼まれてな…姫さんからの文に書かれていた理由と同じことを黄家当主からの文にも書いてあって、受けた」
ニヤッと春麗の方を向いて笑った。
「あなたが…この度はありがとうございました」
膝をついて礼をとる。
「俺があんなに頼んでも打ってくれなかったのに!」
「姫さんの刀は”人を殺さない刀”だからな。俺が打ったんだ。これ以上やると、お前の黒鬼切も、折れる。やめておけ。もう勝負は決した」
陵王は旺季を見た。
旺季の後ろの軍勢も。
(勝てると、思ったんだけどな…)
「これが折れてしまうなら、やめておくか」
黒鬼切を鞘に収め、旺季の元へ向かう。
春麗はその様子を見届けてから、鳳珠の元に戻り、飛翔から渡された紅色の官服を着る。
楊修と俊臣も俥から降りて、五人は劉輝の方へ歩み寄った。