紫闇の玉座-6
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春麗は劉輝と旺季に視線を移した。
後ろからの軍の勢い、うねりの声とは裏腹に、そこだけ音のない世界が広がっているように見えた。
そのとき、カラン、と音が聞こえたような気がした。
劉輝が手にしていた”莫邪”を旺季の手元に落としたところだった。
「しゅ、じょう…」
春麗の声が漏れたのを合図に、他の4人も視線をそちらに向ける。
旺季が”莫邪”を手にし、立ち上がったところで、宝石のような剣が二人の間を割くように飛来し、深く地面に突き刺さった。
藍楸瑛が二人の間に滑り込み、旺季と対峙した。
「待ってください、もう少しだけ!!」
秀麗の声が聞こえたと同時に、別の一隊が雄叫びと共に流れ込んできた。
「あれは?」
「浪燕青だな…村人を連れてきた、か」
「静蘭に影月さんもいますわね」
「ということは、紅秀麗が手を回していた、ということかな?白菊ちゃん、やるね」
俊臣が春麗の顔を見て言った。
秀麗の後ろから、老人が一人出てきて何やら話している。
「どうやら、あの老人と彼らは知り合いのようですね。内容までは聞こえませんが、老人が会話の主導権を握っている。さて、彼は…?」
楊修の独り言に誰も答えなかったが、”干將”をぽいっと劉輝の前に落としたのを見て、春麗は目を見張った。
(もしかして…)
手元に置いてあった荷物をぎゅっと握る。
晏樹が旺季に詰め寄って何やら必死に説得している間に、紅州街道方面から、蹄の音が轟いてきた。
”桐竹鳳麟”と共に、紅邵可、紅玖琅、劉志美が駆けつけてくる。
俥の中の視線が必然的に春麗に集中した。
「父様…」
(そんなこと言われても、知らないもの。それに紅家が主上についているのは周知の事実だし)
その視線を無視して音に気がつき、反対側の半蔀から見て「あっ」と春麗は声を上げた。
藍州方面から白馬の一団。
ひるがえる側は藍家直紋”双龍蓮泉”と…
「誰?」
「文仲!生きてたか!」
飛翔の叫びに鳳珠の顔を見ると頷かれ、旺季派に捕らえられていた藍州州牧の姜文仲であると春麗は理解した。
「なんか、人相のよからぬ集団が後ろについているが?文仲、ただでさえ幽霊みたいなのに、死にそうなカオしてるね?」
俊臣が面白そうに言ったのを飛翔が受けた。
「嬢ちゃんとこの榛蘇芳とかいうのが来て、”姜文仲救いたいんだけど手を貸してくれ”っていうから、うちのモンたちに声をかけたのさ。俺、若い頃に好き勝手やって散々ぶち込まれていた時に、その頃すでに官吏やってた文仲が何度も救ってくれた恩があるからな。国試ン時に驚いたぜ」
と説明した。
「と、いうことは、周りは天下御免の極道一家、ってことですか…」
楊修は飛翔を上から下まで舐め回すように見てから、外の極道一家たちに視線を送って、納得したのか小さくため息をついた。