紫闇の玉座-6
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翌朝、まだ暗いうちに宮城に集合し、狭いが五人で乗りこんだ俥は、目的地に着いた。
飛翔は目の前を半蔀から見ながら、素直に感想を述べた。
「早くも来ているか。旺季のあの衣装はすごいな、孫尚書もだ」
「実は黒門孫家、ですからね、好き好んでなぜか平民のフリされてますけど。過日の件でも明らかな通り、孫尚書の腕は宋太傅より上ですわ」
春麗が気を引き締めた表情で答える。
「ふーん、子兎ちゃんはよく知ってるね」
楊修の疑問を俊臣が代弁する形でポツリとつぶやいた。
「さてと、どのあたりに俥をつけるか…旺季の側ってわけにもいかないし…あの幟旗はなんだ?」
ぐるりとみまわしていると
「珠翠!」
と春麗が小さく叫んだ。
「誰だ、あれ?」
「縹家の大巫女です。あの旗は、縹家直紋”月下彩雲”旗ですね。あぁ、リオウ殿も一緒ですが、大巫女と一緒で、あくまで仙洞令君としての中立という立場で出られると聞いてます」
「そうか…じゃ、中立ってーなら、俺らと一緒だな。なら、そこの向かい側につけよう」
俥はぐるりと回って、目当ての場所に着いた。
「おい陵王、あの俥はなんだ?」
「さぁ?向こう側の最後の一人、かね?」
「まさか他の六部尚書じゃねぇだろうな?」
「それはない、皇毅がしっかりおさえているからな」
「楸瑛、あれは?」
「珠翠殿の手配…とも思えませんね。それに宮城の俥だ」
「おーおー、随分と注目を浴びてるな!」
飛翔がニヤニヤして言う。
「むだに注目を浴びているとも言いますけどね…ひっそり見守るんだと思ってましたが」
「なんだ楊修、怖気付いたか?ここまできたら、なるようになれ、だ。だがまだ出るのは早いな。それに、主上の方は二人しかいない」
月下彩雲の真向かいにある俥は、止まったまま動かない。
その場の全員が訝しげに見守っているうちに、昼九つを打ち鳴らす陣太鼓がかすかに聞こえてきた。
「確か、ヨメが聞いてきた話では、三人ずつと言っていたよな?」
「えぇ、おそらく、最後の一人はもうすぐ来ますわ」
「誰なんでしょうね?」
楊修の問いに、春麗はフフフと笑った。
「春麗、もう一人は、まさか…」
「えぇ、この宮城の中で、唯一と言っていい、正真正銘、”王の官吏”ですわ、ほら」
春麗が半蔀の方へ視線を送ると、四人はバッとそちらに群がった。