紫闇の玉座−5
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春麗と柚梨は鳳珠を見て頷いてから、尚書室の扉からそっと顔を出す。
想像通りー葵皇毅が一人で前から歩いてきた。
春麗が前に出ようとするのを、柚梨が制して言った。
「葵長官、こんばんは。今日はどういった御用で?」
「六部尚書たちが戸部に入って行ったと報告があったのでな」
「それだけで来られたのですか?」
「こういう時期だからな、何をしているんだか…中に入れてもらえないのか?」
「何をお考えになったのかわかりませんが、やましいことは何もありませんよ、どうぞ」
柚梨はにっこりと微笑んで、扉を開けた。
中には、酒盛りをしている六部尚書侍郎。
「お!」
飛翔が屈託なく声を上げた
「珍しいお客さんだな、一緒にどうか?」
「いや…何をしている?」
「見ての通り、酒盛り。最近、陽玉がいなくなってから尚書会や侍郎会やってないなって話になってな。孫尚書はいないが、明日のこともあるし残っている面子で集まっただけだ。御史台長官が入るというのも面白いな」
飛翔は言うだけ言って、春麗に視線で促した。
「茶器しかありませんが、どうぞ」
春麗が皇毅の手に、茶器を握らせ、飛翔は間髪入れずに酒を注いだ。
「飲むとは言ってないが…」
「ま。いーじゃねーか。な?毒なんて入ってないぜ」
「ウン、いいんじゃないかな?皇毅もたまには?いつも仕事ばかりだとすぐに棺桶行きになっちゃうヨ?」
「俊臣殿、そういうことではないでしょう?」
皇毅は俊臣の言葉に答えながら楊修をチラリと見て探ったが、楊修は気付かぬふりをしてぐっと煽って春麗に酒を注がせていた。
「…」
「葵長官?」
春麗がこちらに、と席を勧めた。だが皇毅は立ったまま、手の中の酒を一気に煽った。
「ま、何をしていても構わないが…尚書令殿の言いつけをよく守ることだな」
と言い残して、そのまま室を出ていった。
柚梨がチリリンと戸部の扉が閉まるのを見届けて、振り返って合図を送った。
まだ近くにいることを想定し、飛翔は
「魯尚書、もう一杯どうです?」
と殊更大きな声で促した。