紫闇の玉座−5
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「飛翔、悠舜は私たちに動くなと言ったんだぞ。何を考えているんだ?それに、酒なんぞ飲んでる場合か?」
夜になってから兵部の孫尚書を除いた六部尚書侍郎が飛翔によって戸部に集められた。
いつものように酒瓶片手にやってきた飛翔は、春麗に皆に茶器を配るように言ってから、自らそれぞれに注ぐ。
「まぁ、なんか役に立つだろうよ?それから…どっちに転ぶかわからないんだぜ、いくら動くなと言われても、それぞれ意志はあるし、ちゃんと見極めた上で判断することは悪かないぜ」
飛翔は、だろ?という顔で周りを見る。
「確かに、納得のいく形で今後に携わりたいというのはありますな…ただ、官吏としては民のために働くのみ、先の時のとおり、王位争いにあまり振り回されたくはないのもある」
「そうですね…誰が王になっても、官吏としてやることは変わりません。ですがまぁ、出世には響くかもしれませんがね」
初めに口を開いたのは意外にも魯礼部尚書と楊吏部侍郎だった。
(この中でおそらく主上についているのは飛翔様と魯尚書…楊修殿は今までの発言からどちらかというと貴族派と見られている…)
春麗はぼんやりと尚書侍郎の勢力図を考えながら話を聞く。
「戦になるか何事も起こらないか始まってみないとわからないが、公平で公正に決まるなら文句はないヨ。ところでこうやって話すのは初めてだね、子兎ちゃん」
(こ、子兎ちゃん?)
来俊臣刑部尚書のニンマリとした顔と発言に面食らって、春麗はオロオロと鳳珠と柚梨へ視線を送る。
そんなことはお構いなしに、俊臣は懐から花を出した。
「お近づきの印に骨より白い白薔薇あげる。君には菊より薔薇が似合うからね。いつか鳳珠の顔を見て棺桶行きになってもいいように、オシャレな棺桶用意してあげたくなっちゃった。色白の子兎ちゃんには真っ白の棺桶がいいかねぇ?」
「か、かん…おけ?」
この場に全くそぐわない、想像の斜め、いやはるか上をいく発言にもはやどう答えていいか分からず「ほ、鳳珠様…柚梨様…」とついに声に出して助けを求める。
飛翔がゲラゲラとひっくり返って笑っているし、魯尚書と楊侍郎も想定内なのか普通に笑っている
「俊臣殿…紅春麗は私の顔を見ても耐性があるから、棺桶は不要だ…ついでに言っておくと、私の妻だ」
至極真面目に答える鳳珠に、俊臣は「えぇ〜〜〜??」と叫んで、飛翔が突っ込んだ
「お前、そこまじめに答えるとこじゃないぜ。俊臣、揶揄うのはそれくらいにしておけ。こいつらの話は後だ。戸部はどうする?」
柚梨はチラリと視線を送って鳳珠に促した。
「悠舜がどう動いたか、見届けたい気持ちはある」
鳳珠の言葉に柚梨はうなずいた。
「尚書侍郎の両方があけるとさすがに葵皇毅殿も黙ってないでしょうね…」
「戸部と礼部は二人揃ってるからどちらか残った方がいいだろう」
柚梨と楊修の意見に、飛翔が賛成した。
「どーする、鳳珠?」
「柚梨、残れ」
「黄尚書が行かれるなら、礼部は私が残ろう。紅侍郎、行ってくれるか?」
「かしこまりました」
あっさりと決まった。
「じゃ、明日の夜明け前に、俥寄せに集合な、家の俥なんか使った日には、鳳珠んトコは実家絡んでまずいだろうし、兵部は孫尚書が当事者側でいないが、あくまでも六部尚書侍郎は見届けとして中立という立場で行く、ということで、宮城の俥を使おう。遅れたら置いていく。出てしまえば葵皇毅も追っかけてまでは来ないだろう」
俊臣を見ながら飛翔が言うと、
「旺季殿から皇毅は残るように釘を刺されれているだろうからね。ボク、これから仕事だから朝寝る用の棺桶入れておいてね」
と呑気に答えていた。
「アホか!重くなって仕方ないだろう、一日くらい我慢しろ!」
飛翔がテキパキとまとめている時に、ふっと影の気配を感じて、春麗は窓辺へ移動した。
「…御史台…葵長官がこちらに向かっているようですわ」
「そっか。やっぱ、持ってきて正解だったな。おらみんな飲め飲め」
それぞれが口をつける中、楊修は手のひらの中の酒を黙って見つめていた。
自然、そこへ視線が集まる。
「おぅ楊修、どうするよ?葵皇毅がきてビビったか?」
「何を…馬鹿なことを」
飛翔の煽りに、楊修はグッと一息で酒を飲んだ。
ニヤリと笑って飛翔が注ぎ足したところで、戸部の入り口でチリリンと音が鳴った。