紫闇の玉座−5
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その日の夜、寝台に横になってから、鳳珠にぎゅっと擦り寄った。
「どうした?」
「あの…今から少しあちこち様子を見たいので、いつもの倍の時間で、呼び戻してもらえますか?」
以前は時間を気にせずに力を使っていたが、羽羽に止められてからは鳳珠を頼るようになってしまった。
情けないとは思うものの、黄家の嫁として、自分の身体を壊しては元も子もないと考えているのもある。
最も、嫁らしいことは愚か、妻らしいことも何一つしたことがないが。
そこに気がついて春麗は苦笑したが、気づかずに鳳珠は尋ねた。
「倍?春麗に負担が大きいのではないか?」
「でも、そのぐらいかかると思うんです、お願いしますわ。では」
答えを聞く前にパッと瞳を閉じる瞬間に、不安げな鳳珠の瞳にぶつかった。
あれ?秀麗の棺がない…主上と父様と楸瑛殿だけ…
えっと、絳攸兄様は…?お顔は見えないけど、鳳珠様と同じ黄色い衣‥黄家当主?
叔父様は・??後ろにいるのは、白大将軍と、悠舜様?どういうこと?
秀麗はどこ?見当たらない…
静蘭は、燕青と一緒…秀麗?秀麗??
春麗が苦しそうな表情に変わる。
鳳珠は不安になったが、それでも言われた時間きっかりまで我慢してから、「春麗!!」と抱き締め、叫んだ。
「……」
パチパチと春麗は瞳を開くと、不安なような、怒ったような鳳珠の顔が目に入った。
ふっと力を抜いて、鳳珠の肩口に寄り添うと、抱き締められている腕の力が一段上がった。
「まだ、一つ…確認できていないことが…」
「三日後にしろ。”その日”まで時間があるだろう?いざことが起こった時のために、体調を整えてもらわねば困る。まぁ最も…私には春麗を抱えて何処かへ逃げるとしても、それは造作のないことだがな。でも…」
春麗は肩口から顔を上げて、鳳珠を見上げた。
「普段通りの春麗がいい」
春麗はクスッと笑って、顔をまた埋めた。
「話は明日聞こう。おやすみ、春麗」
鳳珠の温もりに冷たくなっている自分の身体をあずけて、春麗は瞳を閉じた。