黄金の約束−1
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秀麗と燕青は人気のない場所を選んで座ってから、午をつつきながら、小声で早速とばかりに話をする。
「天寿が戸部にきていたのって知っていた?」
「知らないわよ!でももしかしたら、春にいたのかも…自分のこと、全然私に話さないのよ。静蘭にも」
少し秀麗が寂しそうな顔をする
「双子で一緒に育ったはずなのに、昔から、邸にあまりいなかったり…父様にどこに行ったか聞いても、教えてくれなかった。私は静蘭にも春麗にも何でも話すけど、春麗は自分のことは全然話さない…仲が悪いわけではないし、いつも私の心配はしているけれど、私から心配すると”大丈夫”って言って、それ以上は踏み込めないの。家族なのにね」
「そっか、心配かけたくない、という性格なのかもな。でも姫さんの心配をしてくれている、ということは、自分があまり出さないだけで、家族愛はしっかりある、ということだと思うぜ。あんまり気にするな」
バン、と背中を叩いて、燕青が元気付ける。
「天寿、吏部でお菓子食べてきた、って言ってたな。李侍郎さんと食べていたのかな?」
「さぁ?でも景侍郎もお菓子を食べた話をしたら”なら大丈夫”って言ってたわね。吏部に何かあるのかしら?」
昼ごはんの間は、もっぱら吏部と戸部と天寿の話題で持ちきりだった。
その頃、戸部では黙々と書簡整理をしている天寿の姿があった。
部署別に並べる。吏部だけで一山できた。
(叔父様の仕事の成果ね。相変わらず、溜め込むから周りが迷惑する…)
一番下の所管に、どの部署の山かメモをつける。
「終わりました。午休みが終わったら書簡まわりに出るので、資料室に入りますので、鍵をいただけますか?」
「さすが天寿くん、早いですね」
景侍郎から鍵を受け取り、資料室に入る。
ちらっと書簡の山を見て
「鳳珠」
と扉の開いている尚書室から顔を出して声を掛ける。
「天寿くんのこれ、見てくださいよ、やっぱり丁寧ですしわかりやすいですね。今も、午休み終わるまで時間があるからって資料室の片付けに手をつけてますよ。秀くんもまだまだこれからでしょうが頑張っていますし、紹介してくれた李侍郎には感謝です」
「そうだな…」
午休みが終わる少し前に、資料室から出てきた天寿は鍵を返しがてら、景侍郎のところへ来た。
「書庫がまだ三分の一ぐらい空いていましたが、どのぐらいで資料を入れ替えるのですか?」
「前回、入れ替えたのは王が交代した時ですね。10年分はあそこに入るので、大体5年ごとに前のものを別の場所に持っていって、空いたところに5年分入れる、という感じでしょうか」
「5年分で入れ替え、10年保管ですか」
天寿はニヤッと笑って
「無駄に空いていると乱雑になりやすいので、年代別・内容別に分けて、いつの何がどこに入っているか、表を作ったらわかりやすいと思ったんです。書棚に同じ番号を振った紙を案を考えてみたので、みていただいてもいいですか?」
ぺらっと一枚の料紙を渡す。
「!!」
景侍郎は目を丸くしていたが、
「戻ってきたらダメなところを教えてください。書簡回り行ってきます」
とすぐに尚書室に荷物を取りに行って、出てしまった。
「鳳珠!」
入れ違いに尚書室に入って、「これを、天寿くんが」と紙を渡す。
「資料室の整理について、案をまとめた、と。この短い時間に書いていたみたいです。表をつけて、書棚に番号を振った紙を貼る、と」
さっと目を通す。このまますぐ使ってもいい、というか、直すところがない。
「柚梨はどう思う?」
「いや、直すところ、ないでしょう。資料は何年保管か、って聞いていましたが、おそらく今ある量と空いている部分で推察したのではないかと思います。いやはや、天寿くんはまだまだ抽斗がありそうですね」
「・・・わかった」
午後の仕事を始めてから程なくして、天寿が戻ってきた。
「ただいま戻りました。あの、さっきの…」
「尚書が呼んでましたから行ってください」
燕青と秀が仕事をしながら目で天寿を追うのをみて、景侍郎はクスリと笑った。
「天寿、戻りました」
「こちらへ」
次の書簡かな?と思ったら
「これなんだが」
と先ほど、景侍郎に渡した紙を見せられた。
(ダメだっただろうか?)
頭をわしゃわしゃ撫でられる。
「よく考えついたな、天寿。これで進めてくれ。高い位置のものを確認するときは、燕青に頼め」
「かしこまりました!」
嬉しげに尚書室を出たら、「お願いしますね」と景侍郎が資料室の鍵を渡してきた。
「はい!」と元気に返事をして、紙をたくさん持って資料室へ入っていった。