紫闇の玉座−5
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新年から少し経ったあと、夜の戸部の扉がシャランと鳴った。
いつものように春麗が尚書室から顔を出して覗くが、あまりよく見えない。
「あら…」
「どうしました、春麗ちゃん?」
柚梨が心配そうに後ろから覗き込む、
この時間に来るのは酒を持った飛翔ぐらいだと思っていたが、近づいてきた影は想像よりずっと小さい
「リオウ殿?」
「遅くに、悪い」
尚書室の前に立った仙洞令君のリオウを「どうぞ」と迎え入れる。
「少し疲れた顔をしていますね、リオウ殿。春麗ちゃん、お茶を頼めますか?」
「えぇ、今日、柚梨様が持ってきてくださったお菓子もいただきましょう」
リオウを長椅子に促して、テキパキと二人は用意を始める。
鳳珠は筆を動かしながら、チラリと仮面の下からリオウを見たら目があった。
(私たちに用があったということか?)
その視線は無視して、新年早々、必死で残業しなければいけないというわけでもないし、急ぎはこれだけだから終わりにするかと考えながら、書翰に目を落とし最後まで一気に書き上げる。
終わった頃、長椅子の前の机には、四つのお茶とお菓子が用意されていた。
「尚書も、こちらへ。リオウ殿、お茶をどうぞ」
促されて、移動して座る。
リオウは一口茶を飲んでから、顔を上げた。
「旺季、殿が…アイツに親書を出した。雪が止み始める頃、話し合うために会いに行く、という内容で、場所と日時の選択はあいつに任せる、と…」
「そうか」
柚梨は春麗を見た。
少し堅い表情で、スッと瞳を閉じている。
「そこで決着が、つくんですね…」
「あぁ、だろうな」
三人はリオウを見た。
大きな黒曜石の瞳に、特に感情はない…ように見えたが、刹那、少しだけ揺れた。
「それで?」
鳳珠がそれを見逃さず促す。
「オレが…返事を受け取りに行く、と、旺季殿に申し入れた」
「そうか」
「あっさりと、承諾された」
「お前は…ここのところ、居心地悪そうにしていたのを、旺季殿もわかっていたからだろう」
リオウははっと顔を上げて、鳳珠の仮面を見つめた