紫闇の玉座−5
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年が明けた。
結局、主上不在で朝賀はないものの、朝議はあるというので出仕することには変わらなかった。
昨年同様、簡単に邸で新年の挨拶を済ませる。
普通だと着飾って儀式などをするのだそうだが、朝議があるので特に改まったことはしていないそうだ。
実際のところ、本格的なのは黄州でやっているからいい、と鳳珠は考えているだけだが、嫁いで初めての新年なので、春麗はもちろん、いつもより鳳珠も緊張した面持ちで臨んでいた。
朝は春麗も一緒に作った黄州の采を食べ、準備をする。
去年とあまり変わらないかもしれないわね、と春麗が考えていたら、昨年同様、出仕の前に鳳珠に呼ばれた。
「戸部尚書補佐には、これだ」
随分軽い箱を渡される。
「この前、お酒いただきましたよ?」
「あれは味見だろう」
くすくす笑って箱をぐいっと押し付けてきたので、素直に受け取る。
「ありがとうございます。あけても?」
「あぁ、去年ほどいいものじゃないけどな。官服に合うものを、となるとだいぶ限られてきて…すまない」
ちょっと申し訳なさそうに促されて、春麗が箱を開けると、準禁色の紗の黄色い柔らかい布が出てきた。
「これは…髪に巻くものでしょうか…?」
「ああ」
普段使っている桃色の布を外すと、去年と同じように鳳珠が後ろに回り、布を受け取りくるくると髪に巻いた。
きれいに結んで、簪の位置を調節する。
「似合っている」
「ありがとうございます。よろしいんですか、この色…」
「構わんだろう、私がいいと用意したものなのだから。それに…」
「??」
「虫除け、だ」
(真冬に虫なんていないのに??)
不思議そうにこてん、と首を傾げる春麗を見て、ぷっと笑ってから鳳珠は「さて、いくか」と言って仮面をつけて、春麗の手を取り室を出た。