紫闇の玉座−4
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年末が近づいてきて、ぼちぼちと宮城から人が少なくなっていく。
今年は主上不在のため、彩七家当主や各州からの朝賀もなく、例年とは異なった様相で時間が流れていく。
春麗は当主宛の文を出す少し前に、黄州の鳳珠の実家に文と贈り物をしていた。
この春に鳳珠に嫁いで最初の新年だというのに、いまだに挨拶にも行けていないことに心苦しさを感じていたが、実際に宮城のこの状態では、長期で尚書侍郎が休暇を取るということは不可能だった。
ましてや、黄家直系に紅家直系、何を企んでいるかとなることは目に見えている。
「春麗様、黄州の御館様と大奥様から、春麗様に御文が届いていますよ」
帰宅して着替える際に、瑞蘭が文を二通渡してきた。
「ありがとうございます…」
受け取りながらちょっとため息をついて、机案に載せた。
「どうされたんですか?ため息なんかつかれて」
春麗はちょっと自重気味に笑った。
「黄家に嫁いだというのに、挨拶にも帰らない妻で…先日出していただいた御文にはその旨は書いたけど、さぞ呆れていらっしゃると思ってね。それに、紅家は今回は方々に迷惑をかけているから…」
瑞蘭はちょっと驚いた顔をしてから「そんなこと」と言った。
「あちらの御館様も奥方様も、おそらく気にしていませんよ。私の母には”若いのによくできたお嫁さんだ”って喜んで話していたようですし、お勤めを立派に果たして欲しいと言っていたそうです。その上、御館様とも仲睦まじくされているから、あちらは皆喜んでいるとのことですよ。だから、ご心配なさらないでくださいな」
春麗は少し照れ臭そうに微笑んで、ありがとう、と答えて文を開いた。
実際に、瑞蘭から言われたような言葉が並んでいて、もう一度微笑んだ。
預かった文については、頃合いを見て渡すから一任してほしい、とも書いてあり、少し安堵のため息をついた。
「ところで、この前お願いしておいた、例のものはいつ頃できるのかしら?」
「年内には一式届くと思いますよ?確認しておきますわね。でも、一体、いつ、何に使うんですか?」
着付けを手伝っている瑞蘭が厳しい表情に変わる。
「さぁ?いつかしらね?使うかどうかもわからないけれど…必要になる日が来る気がするのよ。鳳珠様には内緒にしておいてくださってる?」
「えぇ、それはもう。家令にも緘口令をしいておりますわ」
「ありがとう。あぁ、それから、もう一つ相談したいことがあって…」
春麗が話した内容に、瑞蘭はにっこりと笑って「畏まりました、明日は公休日ですよね、早速手配します」と答えた。