黄金の約束−1
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次の日
とりあえず春麗は吏部に向かう。
といっても、昨日のうちに全ての仕事を尚書が終えてしまったため、”黎深叔父様”と”朝お茶”である。
「春麗、今日は何をしようかね?」
「そうですね…叔父様がお仕事終えてしまったので、少しあちこち見てきますよ」
敢えて明確には言わなかったが、戸部へ行こうとしていることはすぐにバレたらしい。
「一日に一回は、ここに寄ってくれるかい?」
「そうですね、今回は秀麗がいますから…それに、わたくしが来ないと、叔父様、お仕事溜めちゃうでしょう?」
「そ、そんなことはないけれど…くると約束したら、やる」
(子供みたいね)
クスクス笑って「わかりましたわ、ちゃんと寄りますから、お仕事はしっかりしてくださいね。してないとお茶はなしですよ」とだけ伝えておく。
「失礼します、こんにちは」
午の少し前に、戸部に顔を出す。
「秀、調子はどう?」
「あ…天寿!?どうしたの?」
声を聞いた景侍郎がハッと顔を上げて飛んできた。
「天寿くん!!久しぶりですね!また出仕していたんですか!?黄尚書、天寿くんが!!」
バタバタと報告しに行く常ならざる様子に、燕青と秀麗が「どういうこと?」と顔を見合わせる。
尚書室から、黄尚書が出てきた。
「黄尚書、景侍郎、お久しぶりです、天寿です。1ヶ月ぐらい出仕することになりました。今は吏部尚書付きなのですが、その…吏部尚書が仕事を全て片付けてしまったので、やることがなくなってしまいまして…」
(断られたらどうしよう?)
ちょっと間が空いてしまったが、意を決して口を開く
「もしよろしければ、お手伝いすることがないかと思ってきました」
「「ええっ?」」
燕青と秀麗がびっくりして声を上げる。
景侍郎が嬉しそうに
「天寿くんなら大歓迎ですよ、ね?黄尚書?」
と問いかけると、
「よろしく頼む」
と言われて、頭をぽんぽんと叩かれた。
(あ〜これこれ、安心するわ)
自然と口角が上がっていたのを、燕青が不思議そうにみる。
「天寿、そんな掛け持ちなんて大丈夫?」
「秀、さっきも言っただろう、僕はすることがなくなってしまったんだ。黄尚書、一日一回、吏部には顔を出さないといけないので、なるべく朝に吏部に行ってからこちらにくることになりますがよろしいですか?」
「構わん、そうしてやれ」
「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」
きちんと礼をとって、景侍郎と笑いあった。
「ところで、秀くんと天寿くんはお知り合いなんですか?」
景侍郎から自然に質問が出た。
「実は…双子なんです!」
「えぇ?そう、なの?…あんまり似てませんね」
尚書も振り返って、二人を見比べている。
「僕は母親似で、秀は父親似なんだと思います」
(嘘はついてない、わたくしの方が母様に似てる、うん)
「そうか…わかった」
黄尚書は少し考えて、天寿の顔を見て仮面の下でニヤリと笑ってから言った。
「天寿、午後の仕事だ。そこの書簡の山を整理しろ。それが終わったら書簡周り、吏部は何も言わずに尚書に叩きつけてこい。それから工部に行って”昼から飲んだくれている暇があれば仕事しやがれ酔いどれ尚書”と伝えろ。その後、羽林軍に行って”無駄に張り合って鍛錬をやめれば怪我人が減って経費節減になる”とこれを渡して、府庫で3冊返して5冊もらってこい。戻ったら資料室の整理だ」
「・・・」
燕青と秀麗はもはや言いつけられる仕事量の多さに固まっている。
ニヤリと笑って「かしこまりました」と答え、頭を下げる。
顔を上げたらまた頭をぽんぽんと「期待している」と言って、尚書室に戻って行った。
「天寿…大丈夫なのか、今の量?」
「天寿くんなら、問題ないでしょう、頼みましたね。皆さんはお昼に行ってください」
なぜか景侍郎が燕青に答えた。
「僕は先に軽く食べたので、残るから、秀と燕青は行ってくるといい」
「天寿くん、ちゃんと食べないと体調崩しますよ、心配です」
「大丈夫ですよ、さっき、ちょっと吏部でお菓子食べちゃって」
「あぁ…そうですか、では大丈夫ですね」
(やけにあっさり景侍郎も引き下がったわね)
(姫さん、後で話そう)
「では、俺たち食事に行かせてもらいます」
「「行ってらっしゃい」」