紫闇の玉座−4
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「鳳珠、春麗ちゃん、いつもありがとうございます。ここにくると懐かしい黄州の采が多くて嬉しいですよ。それにしても、藍州の姜州牧が気になりますね」
定刻そこそこで上がり、鳳珠の邸に場を移し、軽く食事を始めたところで柚梨が話の口火を切った。
「あぁ、まぁ殺すことはしないだろうが…紅州は志美と州尹の荀彧の権限は半々のようだが、文仲のところは八対二ぐらいと聞く。そうすると、文仲を消すことで旺季派がうまく八の部分に入り込める、上手くやったな…」
「藍州全てがひっくり返った、というわけではないですけれど、主上が紅州に落ちたから、すかさず藍州にいる旺季殿寄りの方が動いた、ということですね。そこで閭官吏に連れられた李絳攸殿が北方を回る、と…残るは茶州と碧州ですか。まぁ碧州は主上が地震対策で欧陽侍郎と黒大将軍を出されているから、主上側ですよね?」
柚梨の何気な一言に、春麗は「あっ!」と言って、懐から文を出した。
「茶州からも文が。影月さ…杜官吏が、茶州の医師団を率いて、碧州に行っているようです。なんでも、櫂瑜様に叩き出されたとか」
鳳珠は見ていいのか?と確認してから出された文を受け取って広げた。
「なるほど…さすが櫂瑜殿だな、優秀な医師団が揃っているというから、役に立つだろう。杜影月は櫂瑜殿が勝手にやったとなっては困るから自分が、か。前の教訓だな。燕青に主上への文を託したようだが、確かに確実だ」
「宮城宛にすると、許可もろとも旺季殿にとられる可能性がありますからね…ということは、これで茶州と碧州は主上の側ですね」
なんとなくホッとした様子の柚梨に、春麗は目を向けてから「そうでしょうか…?」とつぶやいた。
「どういうことです、春麗ちゃん?」
「この前、柚梨様がお帰りになられた後、飛翔様がいらしたのです。その際に、玉様が碧州に向かう時に悠舜様に言われて内緒で作っていた馬車も、旺季殿が御史台時代に作らせていたという貯蔵庫も、南栴檀作りだとおっしゃってました…南栴檀には飛蝗が寄ってこない、とか。旺季殿はそれをご存知で対応されていた。そして、紅州に行くと言って持って行った食糧も、丸ごと碧州に回したのは旺季殿…」
「欧陽玉は当面、州牧業務で手一杯だろうしな…彼のことだ、面倒ごとは不要、とばかりに無視するかもしれん」
「確かに…あの朝議の時の主上は、下を向くばかりでまさに四面楚歌でしたから…」
「そういや柚梨、あの時、珍しく軍のことに口を挟んだな?」
「あぁ、あれですか…」
少し柚梨は恥ずかしそうに、そしてつい最近のことなのに、昔を思い出すかのように遠い目をした。
「凌晏樹殿が出てこられましたからね。正直、人生終わると思いましたよ。妻や玉蓮がよぎったのも事実です。でもやる、とそれなりに腹を括りました。だって、いくら頼りなくても、主上そっちのけというのはおかしいでしょう?理由はそれだけですよ。」
「私や飛翔が凌晏樹に噛み付くならわかるが、お前が…と驚いた。だが言い分は尤もだったし、あれならあの凌晏樹でも手出しはできないだろう」
心配そうな、不思議そうな表情を繰り返して柚梨と鳳珠を見比べる春麗に、柚梨が気がついて答えた。
「凌晏樹殿に楯突いた人は、消される、と言われているんです。実際に、過去に彼と公に揉めた官吏は、皆いなくなりました」
パチパチ、と春麗は驚いた顔で瞬きをしてから
「柚梨様、なんてこと!それをご存知で…!」
と小さく叫んだ。
柚梨はなんでもないことのようにクスリと笑った。
「魯尚書など、賛成してくださった方もいらっしゃいましたからね、今でも一つの意見としては間違ったことは言っていないと思っていますよ。ただ、鄭尚書令がさまざま勘案した結果、受け入れられなかっただけと思っています」
それを聞いた鳳珠は少し厳しい目をした。
悠舜は本当に”勘案した結果”だったのか、出て行ってしまった今、もはや確認することすらできない。
渋い表情をしている鳳珠を見て、そこに思いを向けているとは知らず、柚梨がまた軽く笑った。
「鳳珠、私のことはご心配なく。あの瞬間、肚を括ってるんです。大丈夫ですよ。今のところ何もありません。さて、話を戻しましょうか。そうすると、どちらに転ぶかは李絳攸殿が行かれたという、北の三州が鍵となりますね…黒白両州は紅家の経済制裁で食料が滞っているでしょうから、厳しいかもしれません」
「そう、ですね…そしてその紅州…というか、紅家が主上に着いたとなると、反対をとるかもしれませんね」
春麗は小さくため息をついた。