紫闇の玉座−4
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戸部での午後のお茶休憩に、春麗はお茶を配りながら、鳳珠に志美からの文を渡した。
そのまま、戸部官たちにお茶とお菓子を配って、戻ってくるとちょうど文を読み終えた鳳珠が顔を上げた。
「お前、いつの間に志美とこんなに頻繁に文のやりとりをするようになったんだ?」
「以前、鳳珠様にお口添えの文を出していただいた後、お願い事を聞いていただいたのでお礼の文を出してからですよ、だからまだ2〜3度ぐらい?」
ちょっと考えながら答える。
「おや、劉州牧からの文ですか?紅州はどんな感じなんでしょう?」
柚梨が何の気なしに会話に入ると、鳳珠は黙ってその文を見せた。
「おやおや、李侍郎…じゃなかった、絳攸殿は閭官吏と北方三州巡りですか。黄州から入るでしょうね」
「あぁ、おそらく黄家当主の説得だろうな。閭官吏が着いていればあの男は説得できるだろうが、李絳攸一人だと難しいな…」
(鳳珠様があれだけ必死にお文を書かれていらして、それでも説得の決定打にはならなかったから、絳攸兄様だったら難しいかもしれない…頼みの綱は…)
春麗は少し小首を傾げてから、口を開いた。
「あの、閭官吏という方は、どのような方なんでしょう?」
志美の文に、鳳珠に聞けと書いてあったので、そのまま素直に春麗は尋ねる。
「…黄門閭家は、別名”黄家の管財人”だ。そうだな、おそらく紅藍両家以外では彩雲国一の金持ちだろう、残念ながら黄家本家よりも金は持っている。国にも桁違いの金を貸しているし、黄家一門の中で、爺さんが一番金持ちだ」
「まぁ…!わたくしのような貧乏な家の出としては想像もつきませんわ」
「春麗ちゃん…」
柚梨がまぁ確かにあの邸は…と苦笑いしながら付け足した。
「そういえば、ある意味、櫂瑜殿とは方向性は違いますが、”伝説の官吏”ですよね?」
「あぁ、黄家は情報屋だが、その中でも過去には御史台官もやっていて、知らないことはないと言われている」
「それから、紅州に行った同期が、着任早々カツアゲされたと言ってました。お金に関しては…あはは」
「か、カツアゲ…」
柚梨の苦笑いに、春麗は目を白黒させる。
「どうやら、仕事は全っぜんしないらしいですよ。でも官吏はやめないのと、いざとなったら出てきて厄介ごとは片付けてくれるそうです。功績も多いらしいですが、何せやり方がやり方なので、ほとんど闇に葬られているとか。それでも気にしていない、と同期の文には書いてありました」
「柚梨、お前、そんなやり取りする奴がいたんだな」
「黄州の州試の時から一緒で…あぁ、あなたが受かった時に呆けていた一人ですよ。今は紅州府にいますが、あなたと親しくしていることで、一目置かれているようで、時々色々書いて送ってくれます」
鳳珠は少し面白くなさそうに、珍しく乱暴に茶をゴクリと飲んだ。
柚梨はその様子を少し面白そうにみてから続けた。
「手紙のお話の続きは、ここではない方が良さそうですね」
「あぁ、悪いが帰りに寄ってもらってもいいか?」
「構いませんよ。では、またご馳走になるということで、さっさと仕事は片付けましょう」
三人は早く上がるために、急いで仕事に取り掛かった。