紫闇の玉座−4
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貴陽黄家別邸。
パチン、と火鉢の炭が大きく鳴り、主人である黄鳳珠は筆を置いて窓の外を見てから、少し考え事をして長いため息をついた。
「どうなさいました?」
春麗も筆を置き、心配そうに鳳珠の横顔を見つめる。
「いや…悠舜はどうしているかと、少し考えていただけだ」
「…そういえば、今朝、葵大夫に聞かれましたわ。凜夫人と付き合いがあるようだが悠舜がどうしているか知らないか、と…」
「なんと答えた?」
「わたくしは存じ上げませんわ、凌黄門侍郎がご存知かもしれませんわね、と」
「凌晏樹だと?…何かみたのか?」
鳳珠の声が一段低くなる。
「いいえ…ただ、以前、随分と悠舜様についてはお詳しそうな話をされていたので…まだ黎深叔父様がいらした頃の話ですわ。お仲間なのかもしれませんわね…」
鳳珠が厳しい表情になったのを目の端で認めてから、「うまく見えるかわかりませんが、見てみましょうか?」と言って、返事を待たずに遠くを見て瞳を閉じた。
動かなくなった春麗を、息をつめて鳳珠は見ていたが、しばらくしてからハッとして立ち上がり、後ろから抱きしめた。
羽羽から言われていた時間を超えてしまったことに気がついたからだ。
(悠舜のこととなると、私もダメだな…)
少し後悔して、グッと腕に力をこめて、特に意識をして耳元でいつもよりいい声を出して「春麗」と呼びかける。
ピクっと反応した春麗がゆっくりと瞳を開いたのを覗き込んで、ほっと息をついて軽く口付けると、春麗の唇が冷たくなっていることに気がついた。
「鳳珠様…?」
「大丈夫か?」
鳳珠は慌てて火鉢を引き寄せてから隣に座り、春麗を膝の上にあげ頬を寄せて抱き締める。
「すまない、羽羽殿に言われていたのに、声をかけるのが遅れた」
ふるふると首を振った春麗が肩を落としながら口を開く。
「大丈夫ですわ…ごめんなさい、鳳珠様。行き先がわからなかったせいか、悠舜様を探すのに少し時間がかかってしまったようです。見えたのですけれど、それがどこかわからなくて…雪の中の、小さな家屋…庵のような感じでしょうか、そこで、ポツンと座っていらっしゃいましたわ」
「そうか…無理をさせた、すまない。だいぶ冷えてしまっているから、湯浴みをして温まろう」
そのまま春麗を抱えて立ち上がる。
「え?ちょ、鳳珠様!?」
「ん?大丈夫だ、何もしない」
「そうじゃなくて…」
ジタバタと暴れる春麗の様子を見て笑いながら器用に仮面をつけ、鳳珠は楽しそうに、そして大切に抱えて室を出た。