紫闇の玉座−3
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室に火鉢を入れていても寒い夜、ほかほかと温まった春麗の身体を抱きしめがら鳳珠はふうと一つため息をついた
「鳳珠様、どうなさったのですか?」
「いや…なかなかすごい一日だったな、と。行きがかり上、あの場に居合わせたが…これで明日の朝には戸部尚書と礼部侍郎は主上についた、と言われるだろうな」
もそもそと春麗は動いてから、居心地のいい位置を決めると、すりっと鳳珠に少し近づいた。
「そうですわね…孫尚書がどう仰るかもあると思いますけれど…お邸に届いていた悠舜様の文、”六部尚書は動かないように”って、あれ、他の方にも届いているのでしょうか?流石に孫尚書は外されていると思いますけれど、明日、魯尚書に確認してみますわ」
「あぁ、頼む。魯尚書に届いていたら、確実に飛翔や俊臣殿にも行っているだろう。それにしても…十三姫はすごかったな。妾腹だというが、なかなか肝が据わっている…が、あれはいただけないな」
「鳳珠様、孫尚書のところに乗り付けるとわかって、馬を降りられたのですね?」
「あぁ、どのみち伝わるだろうが、同じいるのでも馬で、というのは違う気がしたんだ。うまく言えないが…」
「わたくしもそう思っていましたから、よかったですわ」
鳳珠は少し思い出してから、「そういえば」と話題を変える
「春麗が馬に乗れないとは知らなかったな。武芸が達者だからてっきり馬も乗れるのかと」
「まぁ…そういえば、馬も乗ってみたいと子供の頃に黎深叔父様にお願いしたんですよ?百合叔母様は乗れますからね。でも、叔父様がだめだ、って…過保護すぎるでしょう?でも、黎深叔父様、自分が乗れないから春麗もだめだって」
「相変わらず勝手だな…」
「それが叔父様ですもの」
春麗はクスクスと笑う。
鳳珠もふっと笑ってから、春麗の髪を指先でくるくると弄びながら聞いた。
「この先、どう思う?」
「鳳珠様は多分お気づきでしょうけど、劉輝陛下は…正直、わたくしはいい印象がほとんどありませんでしたの。秀麗が後宮に賃仕事で貴妃として入った時から、わたくしとは距離がありましたし、国試だって秀麗の願いを叶えてあげたい、そうすれば手元に置いておける、ただそれだけで実施されましたし…まぁお陰で今のわたくしがあるので、国試に関しては感謝してますけど」
一拍おいてから続ける
「配属の主上の補佐官だって、鳳珠様や魯尚書や宋太傅の推しで興味を持ったのと、朝廷に残る唯一の女人官吏、ということで半分監視もあったでしょうね。絳攸兄様が意外と守ってくださいましたし、そういう意味では辞めたら”女なんてそれみた事か”ってなるのは目に見えていたので、なんとか我慢しましたけど。挙句、何もしないし好きなものにだけ囲まれて満足してるし、まぁそういう経緯があれこれあったものですから、はっきり言っていい印象は、全く」
これでもかというーーだがどれも当たっている酷評に、鳳珠はクスリと笑った。
「でも、貴陽を落ちた時に、思ったんです。あの方は、もしかしたら誰も殺さない世界を作ってくださるかもしれない、と。だから、少し見直しました。少しですけどね」
「そうだな…おおむね、私も同感だ」
もう一波乱はあるな、と鳳珠は呟いてから、腕の中の春麗に口付けて目を閉じて眠りについた。